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「失敗を成功のもと」にする脳のしくみを解明②

実験方法
 大学生男女の実験参加者が、0.05秒以下の誤差でストップウォッチを5秒で止めることができると成功、そうでなければ失敗となるストップウォッチゲームに取り組んだ。このゲーム課題を行う際に使うストップウォッチのデザインを、自分で選んだとき(自己選択条件)と、強制的に選ばされたとき(強制選択条件)とで、脳活動がどう異なるかを、磁気共鳴画像撮影装置(MRI)を用いた脳機能イメージング法によって調べた。
実験結果
実験参加者のうち90%以上の方が、自己選択条件の方が強制選択条件よりもポジティブな気分になったと答えた。そして,実際の難易度はまったく同じであるにも関わらず、自分でデザインを選べた場合(自己選択条件)の方が、強制的に選ばされた場合(強制選択条件)よりも課題の成績が統計的に有意に高かった。また、脳活動において、悪いことがあると活動が低下することが知られている前頭前野腹内側部において、自己選択条件でのみ、失敗に対する活動低下が見られなくなった。すなわち、自己選択条件では、前頭前野腹内側部が失敗をただ悪いこととして捉えているのではないことが示唆された。同じように悪いことがあると活動が低下することが知られている腹側線条体においては、失敗に対する活動低下は自己選択条件と強制選択条件の両方で同じように認められた。

【著 者】
村山 航(レディング大学)
松元まどか(玉川大学脳科学研究所)
出馬圭世(カリフォルニア工科大学・日本学術振興会)
杉浦綾香(東京大学)
Richard M. Ryan(ロチェスター大学)
Edward L. Deci(ロチェスター大学)
松元健二(玉川大学脳科学研究所)*研究グループ責任者

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