本日 20 人 - 昨日 391 人 - 累計 896452 人
5/31(月) 19:55 TBS NEWS

 新型コロナウイルスの感染拡大が子どもの進路に影響したと答えた人が、2割以上にのぼりました。

 日本政策金融公庫が高校3年生の子どもを持つ保護者およそ1200人を対象に行った調査によりますと、新型コロナの感染拡大が子どもの進路に影響したと答えた人は22.9%にのぼりました。具体的には、進学先を自宅から通える学校や費用の安い学校に変更したり、海外留学をあきらめたりしたということです。

 背景として、回答者のおよそ4割が新型コロナの影響で収入が減少したと答えていて、教育費の補てん方法としては「貯蓄の取り崩し」が最も多くなっています。

5/31(月) 19:00 レタスクラブ

子どもが学校に行くのに苦しさを感じているとき、見守る大人はどのような対応をとればよいのでしょうか。

『学校では教えてくれない自分を休ませる方法』は、休む権利を子どもたちに委ねることを推奨している1冊。小学校高学年から読めるやさしい文章で、「正しい休み方」をまとめています。著者である精神科医井上祐紀先生は「サボる」や「逃げ」といったネガティブなイメージではなく、問題解決の手段として「休むこと」を提案をしています。

■■ストレスサインを見逃さないで
体の疲れに比べて心の疲れは気付きにくく、休むタイミングもわかりづらいもの。
まずは子どもに次の表を見せて、ストレスサインが出ていないかをチェックしてみてください。ひとつでも当てはまったら、少なからず子どもの心が休みを求めている証拠。反対に、しっかり休むことができたらこのストレスサインが徐々に減っていきます。

■■「自主休校」の大切さ
「休み」は誰にとっても絶対に必要なこと。会社員だったら有給休暇という制度があり、特に理由がなくても休みをとる権利が保障されていますが、子どもは基本的に病気やケガなどの理由がないと学校を休むことが許されていません。

「疲れた」「休みたい」と感じるくらいの「病気になる手前」で休むことができれば、すぐに元気になれることも多いもの。子どもが自分自身を守り、力を蓄えるためにも「学校に行かない」という選択が必要な場合もあるのです。
井上先生はそういった場合、「不登校」ではなく「自主休校」と言い表すのがよいと考えています。

■■ステップアップは少しずつ
学校を休む場合、子どもがうしろめたさを感じずにしっかりと休める環境づくりが必要、と井上先生は語ります。
大人は子どもの今の状態を知り、そしてその状態に合った目的や手段を考えてみましょう。

安全を感じていなければ睡眠や食事のリズムを整えることはできず、生活リズムが整っていなければ好きなことを楽しむことはできません。そして好きなことを楽しめなければ学校に戻るにせよ、他の道を選ぶにせよ、その準備をすることも難しくなってしまいます。
ステップアップは必ず1段階ずつ。子どもを見守る立場は、子どもの「今」に合う生活をサポートすることが大切です。

■■「ひとりで頑張る」ことを求めない
悩みやつらさは「自分一人でなんとかしなければいけない」ものではない、と井上先生は続けます。
その考えは自分に課すべきものでもなければ、子どもに求めるものでもありません。上手に休むためには誰かに相談することが必要です。

親はもちろん、学校の先生やスクールカウンセラー、習い事や趣味の活動など学校以外の場で関わりのある大人などが候補としてあげられます。
子どもにとって害のない「安全な相談者」を見極めるポイントは下の図の通り。大人から見たその人の印象ではなく、子ども当人にとってどうか? ということも大切です。

自分自身も子どもにとって「安全な相談者」であるかどうか、時折振り返ってみてもいいかもしれません。

文=小向佳乃

5/31(月) 9:16 PRESIDENT Online

自ら伸びていく子を育てるには、どうすればいいのか。脳科学者の青砥瑞人さんは「メタ認知能力のスキルを身につけさせるといい。『自分なりの物差し』があれば、心も強くなる」という――。

■メタ認知能力が高い人ほど、目標達成能力が高い

 教育の本質的な目標は自らの力で自分を成長させられる術と、幸せな状態をつくり出せる術を学んでもらうことです。その両方の実現に不可欠な「状態」が心理的安全性であり、不可欠な「スキル」がメタ認知能力です。メタ認知(metacognition)という概念は、認知心理学の領域で生まれたものです。

 メタとは「高次の」という意味ですから直訳すれば「(自分の)認知自体の認知」。簡単にいえば「自分を知ること」です。メタ認知能力が高い人ほど自分の特性や癖を正確に把握できるため、目標達成能力や課題解決能力が高いと言われています。

 メタ認知の明確な定義は研究者によってマチマチではありますが、私なりに定義するメタ認知とは「自己を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ機能」のことです。

■自分を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ

 ポイントは2つあります。

 ひとつはやはり自己の捉え方です。自分の内面、つまり自分の思考パターンや行動パターンをはじめとする自分の脳の特性や、自己変容の軌跡などに意識を向け、それらを俯瞰的に捉えることがメタ認知において絶対不可欠です。世間でもメタ認知についてさまざまな解釈が存在しますが、共通しているのは自分自身を対象化し、もうひとりの自分がそれを見ているような感覚で自分を捉えるということです。

 しかし、自分を俯瞰視するだけではメタ認知の「スキル」としては物足りません。

 それが2つ目のポイント。「自己について学ぶ」です。自己と向き合い、そこで得た情報を脳の中に記憶痕跡としてしっかりと書き込んでいくことが、メタ認知の本質的な意義であり役割ではないかと思うのです。メタ認知の定義に自己学習を含まないケースもありますが、教育現場にメタ認知スキルを導入していくのであれば、私は含むべきだと思います。

■自分と向き合う習慣がない人ほど、誰かのせいにする

 メタ認知能力を高める第一のステップは、自分と向き合う機会を増やすことです。自分のことを対象化して認知する行為を専門用語で内省といいます。人は内省をする機会を持てば持つほど、脳のなかで物理的変化がおき、確固たる「自己」という情報が造形されていきます。

 日本の教育の最大の問題は「子どもたちの当事者意識を育む」視点が欠けていることです。うまくいかなかったら誰かのせいにする。

 不満があったら誰かを責める。責任を押し付ける対象がよくわからないときはとりあえず社会や時代のせいにする。このような他責の発想も結局、自分と向き合う習慣がないために、「自分の責任かもしれない」「自分にできることがあるかもしれない」といった発想が湧いてこないのです。

 他責は生まれ持った性格などではなく、単に長年の脳の使い方による「癖」です。当事者意識の正体とは、外部から入ってくる情報を処理する際に内部情報(自分に関する情報)も同時に発火できるような情報伝達構造に脳がなっているか、ということです。

 その神経細胞同士を結ぶ回路は、つながったり、切れたり、太くなったり、細くなったりと常に変化していくものですから、子どもが当事者意識を持った大人になれるかどうかの分かれ道は、結局のところ「どれだけ自己と向き合ってきたのか」の経験値によるところが大きいのです。

■「自分なりの物差し」をつくるサポートが大切

 自分と向き合う機会が少ないと、必然的に自己に関する情報は外部情報に偏ることになります。先生や親からの評価やクラスメートからの評価、SNSでの評価。こうした第三者による評価はポジティブな作用をもたらすこともあるので一概に悪いわけではありませんが、「自分ってこうだよな」と内省をする暇もなく「あんたってこうだよね」という情報ばかり浴び続けていれば、それが脳のなかでの唯一の「自分の情報」になってしまうことは十分ありうる話なのです。

 相田みつをさんの言葉で私が好きな次の名言があります。

 「他人の物差し、自分の物差し、それぞれ寸法が違うんだな」

 まさにその通りで、他人の物差しで自分を知ることは大切な情報ではあるものの、自分の物差しで自分を見ることもできるのが人間なのです。外部評価に依存する形で自己が形成されていくと、結果的に周囲の意見に流されたり、人から何を言われるかを気にしすぎて積極的に行動が起こせない脳になってしまいます。非常に不安定な状態であり、それをこじらせると「自分を見失う」ということにもなりかねません。

 それを防ぐためにも子どもたちに自分と向き合う機会を与えていく過程で、その子の好きなもの嫌いなもの、大事にしていること、こだわり、得手不得手、やりたいこと、喜びを感じることなど、本人なりの物差しをつくっていけるようにサポートをしてあげることが大切です。

 それは別に難しい話ではありません。ベースとなる考え方は、

 ・大人の物差しを子どもに押し付けない
・子どもの物差しを否定しない

 実はこれだけの話なのです。

■「その日に起きた嬉しかったこと」を子どもに尋ねる

 子どものメタ認知能力と自己肯定感を高め、同時にウェルビーイングを実現する手軽な手段として私がおすすめするのが、「その日に起きた嬉しかったこと」を毎日子どもに尋ねることです。非常にシンプルですが、効果は抜群です。

 家庭でやるならご飯を食べるときに家族で報告し合うのでもいいでしょう。それなら親御さんもメタ認知の訓練ができますし、脳内に蓄積しがちなネガティブな情報を少しずつ入れ替えていくいい機会にもなります。毎日かっちり時間を決めてやる必要はありません。何気ない会話のなかに織り込んでいくことができれば十分です。

■ポイントは「毎日」やること

 ポイントはできるだけ毎日やることです。内省の回路を太くするためには場数が必要であるのですが、そもそも人の記憶は本人が思っている以上に曖昧です。時間軸が長くなると大半の情報は忘却され、印象深い記憶(専門用語で「ピークエンドの情報」)ばかりが残ってしまう特性があります。

 人は強い感情と紐づく記憶ほど海馬に定着しやすいため、どうしてもピークエンドの情報は「怒られた」「失敗した」「恥ずかしい思いをした」といったネガティブな体験が多くなってしまう傾向があり、日常にあった小さな幸せを忘れてしまいがちです。だから振り返りは記憶がフレッシュなうちにしたほうがいいのです。

 そうした細かい情報にちゃんと気づき、そのときの感情をセットにして思い出し、共有する行為を通して、自分に関するポジティブな情報が少しずつ書き込まれていきます。しかも人に話しているうちに自分のなかでの興味関心の矛先や、大事にしている価値観、幸せを感じやすいポイントなどが少しずつメタ認知できるようになります。

■「なぜ? 」「どうして? 」はいらない

 もうひとつ重要なポイントは、聞き手は相手の言葉をそのまま受け止めてあげることです。

 私が主催するワークショップでも相手が言ったことに対して「なぜ? 」「どうして? 」「なにが? 」とロジックを要求する人がたまにいます。もちろん自分の反応性を言語化していく作業もメタ認知のトレーニングとして大切ですが、子どもにとっては高度な技術ですし、脳の回路も一朝一夕でできるわけではありません。

 そもそも人の感覚や感情は非言語的な反応ですから、必ずしも理由があるとは限りません。理由が言語で説明できないからその反応を軽視するのではなく、非言語的な反応性を大切にすることで、「良いな」「素敵だな」「楽しいな」「好きだな」といったポジティブな感情が芽生えやすい脳に変わっていきます。

 実際、人の脳には前側の島皮質(Anteria Insula)と呼ばれる、感情の強度を主観的にモニタリングする部位があります。日常生活ではあまり使われる場面がない部位なのですが、嬉しかった出来事を大小あれこれと思い出すことを毎日繰り返していれば、その領域もUse it or lose it の原理で強化されていきます。すると小さな幸せであっても気づきやすい脳になるのです。

 自分の内面を言語化するトレーニングは、内省が得意な脳に変わったあとからはじめれば十分です。まずは「なんでかよくわからないけど、そう感じた」という事実を受け入れることです。

■「反省会」をやめたらストレスが減った

 最後に、以前私の講演に参加された男性から聞いた後日談をさせてください。

 その男性はやり手の経営者で、家庭では職場と同じノリでお子さんと毎日反省会をすることが習慣だったそうです。課題意識を強く持ちながら毎日を過ごし、日々行動を改善していく典型的なビジネスパーソン発想です。

 強制的にやっていたため子どもは幸せそうにはみえず、それに対して男性もモヤモヤした気持ちは抱いていたものの、「課題解決能力を身につけることは子どもの将来に絶対に役立つ」と信じて続けていたそうです。

 しかし、私の講演を聞いて男性は考え方を改めたそうです。

 毎日の振り返りで子どもが成長できたことや嬉しかった出来事などに意識を向けるようにしたところ、本人も子どももストレス要因がなくなり、家庭内の会話も増え、なにより幸せな気分で毎日眠りにつけることが嬉しい、と報告をいただきました。みなさんもぜひやってみてください。



----------
青砥 瑞人(あおと・みずと)
DAncingEinstein代表
高校中退後、渡米。UCLAにて神経科学部を飛び級で卒業。帰国後、脳神経科学の知見を人材開発や教育現場に生かすべく起業。世界初のNeuroEdTeck(R)という分野を開拓しつつ発明活動も行い、いくつもの特許を取得している。NewsPicksなどで露出が増えており、いまもっとも注目をあつめる、脳科学者の急先鋒。
----------

DAncingEinstein代表 青砥 瑞人

5/30(日) 20:11 ベネッセ 教育情報サイト

「不登校新聞」石井志昂さんご自身に、かつて不登校になった経緯や今の人生を歩き始めるまでをお話しいただくことで、「学校」という場について考えます。前編では、石井さん自身が不登校になるまでを話していただきました。この後編では、石井さんが不登校を経て自分の人生を歩みだすまでを振り返ることで、「不登校」について考え直していきます。

不登校で受けた傷は、プロセスに沿って回復していく
不登校になってから、心配して連絡してくれた元同級生もいましたが、学校からの連絡は一切ありませんでした。だから、学校に戻ってこいという「登校圧力」はなかったし、あまり干渉されることはなかったです。

以前の記事「不登校で子どもが負った心の傷 どんなプロセスで回復していく?」(https://benesse.jp/kosodate/202102/20210221-1.html)でもお伝えしたように、不登校からの回復は、身体症状が出る⇒感情を噴出させる⇒体験を言語化する⇒支援を必要としなくなる、という一定のプロセスをたどることが多くあります。私の場合も同様でした。

身体症状に関しては、不登校になる直前に強く出ていました。学校へ行こうとすると目の前が揺れて、まっすぐな坂道が曲がりくねって見えるようになり、希死念慮もありました。不登校になってすぐに次の段階に移り、学校への怒りや、将来どうなってしまうんだろうという不安も含めて、感情が爆発。この時期は半年以上続きました。

そして、フリースクールに通い、たくさん話を聞いてもらうことで言語化の時期に入り、心が救われていったのです。

フリースクールについては、先に知識があったことで救われた
フリースクールについては、誰かに教えられたのではなく、自分で本か何かを読んで知ってはいたんですね。それは、学校に行かない子たちが集まる場があり、それがフリースクールという名称だと知っているという程度でした。それだけでも、どうしようもない不安の中にいたときに、「そこへ行けばいいんだ」と、気持ちを切り替えることはできました。

これは、今の私が不登校新聞を作っている原点でもあります。こうした情報を、とっかかりだけでも知っているだけで、気持ちのありようが違ってくるということ。もし、フリースクールの名称も知らず、寄るすべが何もないままだったら、私の人生はまた違っていたと思うんです。

気持ちが救われた、フリースクールでの3つの経験
フリースクールに通うようになり、スタッフにたくさん話を聞いてもらうという経験があって、不登校になってから3~4年かけて気持ちの整理をつけてきました。

私の場合、フリースクールでの言語化の時期が長かったのですが、次の3つのことに救われました。

【1. 私の苦しい気持ちを受け止めてくれる大人たちがいたこと】
今までの学校や塾の先生とは違い、共感的な態度で受け止めてくれる大人たちがいた、ということが支えになりました。とにかくひたすら、スタッフが私の話を聞いてくれたのです。

【2. 年上の先輩、ロールモデルを知ったこと】
学校へ行かなくてもなんとかやっていけるんだ、という少し先のロールモデルを目の当たりにできたことは、言葉で理解する以上に大きな力をもっていました。不登校だと強い孤立感がありますが、「こういう人がいるんだ」と知って、安心感を得ました。

【3. 無理に学校に戻らなくていいんだと心の底から思えたこと】
これは、どちらかというとネガティブな話となります。同じフリースクールの生徒で、学校だけにとらわれて生きていた人がいました。彼はいつも、「明日から学校へ行くんだ」、あるいは「学校は行かないけど、バイトするんだ」と言っていました。やるんだ、やるんだと言っては自分を責めて、結局何もできない。フリースクールで勉強もしないし、楽しむこともしない。彼は学校に行っていない自分を否定しているから、同じように学校へ行っていない私たちのことも否定する。だから友だちもできません。

おそらく、彼ではなく親が学校に囚われていたのだと思います。「そんなところは早くやめて学校へ行け」と親から言われ続けて、彼は自分のことを否定していたのでしょう。ある日突然、彼はフリースクールにも来なくなってしまいました。

彼を見ていて、「学校に囚われていると、ほんとうの自分の人生を生きられなくなるんだ」と痛感しました。

フリースクールという理想的な環境に身を置いて救われたという経験と同時に、フリースクールにいても苦しんでいる人が隣にいたという経験から学んでしまった、ということになります。

この3つのことがあって、だんだんと不登校という苦しさから抜けていきました。

疑問を疑問として受け止めてくれる、普通の社会にふれることが救いに
フリースクールで苦しさから抜けていくのと同時進行で「不登校新聞」に出会い、記者となりました。活動の場ができたことによって、前向きなエネルギーをためていくことができたのです。

「不登校新聞」の記者として、様々な大人たちに取材をしたとき、こちらが思っていることについて疑問をぶつけると答えが返ってくる、という経験をしました。学校では、「校則がおかしい」といえば、「そんなこと言っているおまえがおかしい」と、頭ごなしで否定されていたのが、社会の中では疑問は疑問として受け止められ、共感されたり、きちんと向き合って答えられたりする、疑問に感じてもよかったんだということを知りました。

取材する中で、糸井重里さんや横尾忠則さんのような文化人の方々が、「学校へは行かなくても大丈夫」といったポジティブなことばで不登校について語ってくれました。特に糸井さんが言ってくださった「不登校したら、楽しんだらいい」という言葉は、私の指針となりました。

不登校については暗い話が多いのはしかたのないことだけれど、当事者は落ち込んでいるばかりではありません。登校するのは厳しかったよねとか、リスカしちゃったよとか、日常をサバイブしながら、笑っていることもある。そういうことは大事だと思っていたときに、糸井さんから「不登校の日常を楽しむ」という指針を与えてもらったのでした。

不登校は、今、ネガティブな捉え方をされるばかりではなくなりました。それでも、不登校で苦しんでいる人たちがたくさんいます。かつての自分がそうだったように、今苦しい人たちが、少しでも前を向くことができるようにと、私は「不登校新聞」を作り続けています。

まとめ & 実践 TIPS
不登校になってから、心の回復が始まり、フリースクールに通った石井さん。フリースクールでは、話を聞いてくれる大人がいたこと、ロールモデルがいたこと、「学校にとらわれていたらダメだ」ということ、この3つの点に気づいてよかった、と話します。自分の経験から少しでも不登校で苦しむ人への情報発信をという思いが、「不登校新聞」の編集長としての原動力となっているのだそうです。

プロフィール
石井志昂
『不登校新聞』編集長。1982年生まれ。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」に入会。17歳から不登校新聞社の子ども若者編集部として活動。不登校新聞のスタッフとして創刊号からかかわり、2006年に編集長に就任。現在までに不登校や引きこもりの当事者、親、識者など、400名以上の取材を行っている。

5/30(日) 5:01配信 読売新聞オンライン

児童生徒らへのわいせつ・セクハラ行為で、2020年度に懲戒免職などの処分を受けた公立小中高校と特別支援学校の教員は少なくとも186人に上ることが、読売新聞の全国調査でわかった。19年度の273人から約3割減ったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校期間を悪用した事案もあり、教員によるわいせつ問題の根深さが改めて浮かび上がった。

 読売新聞は4月、47都道府県と20政令市の計67教育委員会に対し、20年度にわいせつ事案などで処分した教員数を調査。相模原市は「被害者への配慮」として回答しなかった。

 20年度に処分を受けた教員186人のうち、懲戒免職となったのは109人。教え子など18歳未満の子供に対する行為で処分されたのは100人に上った。

 20年度は全国で一斉休校の措置が取られたことが影響したとみられ、文部科学省による19年度の同様の調査と比べると、処分者数は減った。ただ、休校期間中に長距離移動をして児童へのわいせつ行為に及んだり、SNSを使って生徒を呼び出したりした教員がそれぞれ懲戒免職となったケースもあった。

 過去のわいせつ事案について児童生徒側が申し出たり、教員が自主申告したりするケースも目立ち、札幌市と、兵庫、山口、千葉の各県では、28~5年前の事案で教員各1人が処分された。

 15年前に高校教員から受けたわいせつ行為を兵庫県教委に届け出た女性は「わいせつ教員問題の深刻さが報道されるのを見て、自分のような被害者が出ないようにしたいと思った」などと説明したという。

5/29(土) 23:26 TBSニュース

今年2月、大阪府高槻市の小学校で体育の授業後に死亡した男子児童が、マスクを着けて持久走に臨んでいた可能性がある問題。男子児童の父親が29日夜、JNNの取材に応じました。

 今年2月、大阪府高槻市の小学校で体育の授業で5分間の持久走を行っていた際、当時5年の男子児童が突然倒れ、搬送先の病院で亡くなりました。遺族によりますと、児童の死因は心不全だということです。

 高槻市教育委員会によりますと、男子児童が保健室に運ばれた時、マスクはあごにかかっていたということですが、マスク着用と死亡との因果関係はわかっていません。

 29日夜、男子児童の父親がJNNの取材に応じ、心境を語りました。
 「突然いなくなるって、とても悲しいですし、人って簡単に死ぬんだなぁと。持病とかもなかったので、毎日とても健康な姿だったと僕は思っています。考えるきっかけ、マスクの使い方を考える、きっかけになればなと」(男子児童の父親)

 この報道を受けて、萩生田文部科学大臣は、「体育の授業でのマスク着用は必要ないと改めて周知していく」としています。

5/29(土) 7:00 神戸新聞NEXT

兵庫県立大環境人間学部(姫路市)を3月に卒業した田中成夢(なるむ)さん(22)が、たつの市内の小中学生計約630人を対象に動画投稿サイト「ユーチューブ」の利用実態を調べたところ、平日でも全体の約6割が1時間以上視聴していた。休日に限ると、中学生では半数超が2時間以上見ており、5時間以上という生徒も約1割に上った。(地道優樹)

小中学生のユーチューブ視聴時間


 田中さんは龍野高校を卒業後、県立大に進学。子どもとインターネットの関わりに興味があり、在学中は県立大の学生らでつくる「ソーシャルメディア研究会」に所属した。4月にたつの市役所へ入り、環境課で働いている。

 調査は市教育委員会の協力を得て実施し、結果は卒業論文にまとめた。小学校3校(半田、神部、御津)と揖保川中学校に質問用紙を配布し、小学5、6年生計329人と中学1~3年生計305人から有効回答を得た。

 ユーチューブの利用経験は小学生の95%、中学生の99%が「ある」と回答。使用する機器はスマートフォンが46%で最も多く、次いでタブレット端末(30%)▽ゲーム機(13%)▽パソコン・その他(11%)-の順だった。

 平日の視聴時間は全体の57・5%が1時間以上と答えた。一方、休日ではこの割合が74%まで増え、視聴も長時間に。中学生では男子の61%、女子の56%が2時間以上見ていた。よく見るジャンルは、小中学生とも男子は「ゲーム系」がトップで、女子は「音楽」と「バラエティー系」が上位二つだった。

 また結果からは、夜更かしの一因となっている現状も浮かび上がった。小学生で平日午後11時以降に就寝する割合を比べると、動画の視聴時間が2時間未満の場合は12%だが、2時間以上では29%に。中学生でも同様の傾向がみられ、午前0時以降に就寝する割合は、視聴が2時間未満だと18%だが、2時間以上になると30%まで上昇した。

 田中さんは「絶対に見ないというのは難しい。寝室には持ち込まないといった家でのルールを決めることが必要と感じる」と話していた。

5/29(土) 6:01配信 神奈川新聞

川崎市多摩区の登戸駅近くで児童ら20人が殺傷された事件から2年の28日朝、登校中の児童を見守る活動が同区内の全市立小学校で一斉に行われた。神奈川県警多摩署員や市教育委員会職員らが校門前や通学路に立ち、児童に優しく声を掛けながら異変に目を光らせた。

 市立稲田小の校門前で活動に参加した信澤公昭署長は、「このような事件は二度とあってはならない。事件を風化させないためにも、学校や地域の協力を得ながら見守りを強化したい」と強調。1年の娘(6)の登校に付き添った金原聖さん(35)は「親としては不安な気持ちが拭えない。私たち親も子どもたちを守っていかないと」と話した。

 署と区は事件後、毎月28日を「子ども見守りの日」に制定。私立カリタス小を含む区内15小学校を対象に、官民合同の見守り活動を続けている。

神奈川新聞社

5/28(金) 20:10 ベネッセ教育情報サイト

学校に行く前の支度が遅い、宿題をする時間なのにいつまでもテレビを見ている……など、お子さまが時間を意識して行動できないとお悩みのかたは結構多いのではないでしょうか。そこで、子どもが、言われなくても時間を意識して行動できるようになるためのサポート方法をご紹介したいと思います。
(赤ペン先生 吉田)

1日のスケジュール表を作る
時間と行動を結びつけるために、「起床・洗面・朝食・登校・帰宅・おやつ・宿題・夕食・テレビ・入浴・就寝」などの大まかなスケジュールをお子さまと相談して決めて紙に書き、リビングなどのよく目につくところに貼っておくのも一つの方法です。
その際、お子さまのお楽しみの時間も入れることをお勧めします。そうすると、メリハリがつき、ほかのこともスムーズに行動しやすくなります。
また、「何時から○○を始める」「何時から何時までは、○○をする時間」と区切りをつけることで、時間を意識することができます。
「宿題をする」「お風呂に入る」などのように、お子さまが行動に起こしづらいことに対しては、時計のアラームなどで知らせるようにすると効果的です。

自分で考えられるように、声かけをする
大人と子どもの時間の感覚には差があります。大人にとっては、時間を考えて行動することは当たり前のことかもしれませんが、子どもにとっては、時間の感覚を習得するのはなかなか難しいことです。
おうちのかたのペースに合わせると、お子さまの行動がスローに感じるため、何でもっと早くできないのかと、やきもきしてしまい、思わず「早くしなさい!」と言ってしまうことが多いのではないでしょうか。毎回、「早くしなさい!」「~しなさい!」と言われ続けると、子どもは、言われることに慣れてしまい、言わないと動かない状態を作ってしまう可能性があります。
せかしたり、指示するのではなく、「○○をするのは、何時から?」「○時だよ。時間は大丈夫?」などと、自分で先のことを考えられるような声かけをするとよいでしょう。

やりたくないという気持ちがブレーキになっている場合がある
子どもは、目先の楽しいことには積極的になれますが、面倒なことや、やりたくないことは後回しにしてしまう傾向があります。
学校へ行く支度は、さっさとできないけれど、見たいテレビ番組があるときは、言われなくても間に合うようにテレビの前に座る…などは、まさにそれです。その気になれば、ちゃんと時間を意識して行動できるのです。
何かを始める時刻になってもダラダラしているようでしたら、それは、やりたくない原因があるからだと思います。その原因を聞いて、一緒に解決していくことから始めましょう。
たとえば、なかなか宿題をしたがらない様子のときは、難しかったり、量が多いのかもしれません。そのような場合は、命令的な言い方は避けて、「今日の宿題は、何?一緒にやろうか。」「宿題はどれくらいあるの?そんなにあって、大変だね。何から始めようか?」などと、お子さまに寄り添うことで、お子さまの気持ちは晴れ、行動に移せるようになるのではないでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS
毎日毎日、時間の管理ができないわが子を目にすると、親としては、口うるさくなってしまったり、心配になったりするのは、もっともなことです。
しかし、大人になっても毎日仕事に遅刻するという話はめったに聞きません。成長と共に、時間の感覚は養われ、行動が習慣化されると、気持ちのコントロールも徐々にできるようになっていくものです。
焦らず、長い目で、見守ってあげましょう。

赤ペン先生 吉田かさね
赤ペン先生歴26年。3年生担当
高校生のとき、進研ゼミを受講していて、赤ペン先生の文字の美しさ、丁寧さ、優しさにふれ、自分もこんなふうにできたらいいなと思い、赤ペンの道へ。日々「『赤ペン』って楽しい!」「次もがんばろう!」と思えるような声かけ・指導を心がけている。
また、続けることで、力がついたと実感でき、自信をもってもらえることが一番の励み。
趣味:読書・舞台鑑賞
自己紹介:ケセラセラ(なるようになる!)
一男一女の母。

プロフィール
赤ペン先生
赤ペン先生は「進研ゼミ」の選考に合格し、ゼミ独自の研修・教育を通じて、教科の学習内容やお子さまの力を伸ばす指導法などを学んだ人です。 お子さま一人ひとりの解答状況や学習の到達度に合わせて、丁寧に添削・指導いたします。 ※「赤ペン先生」は(株)ベネッセコーポレーションの登録商標です。

5/28(金) 15:00 朝日新聞

児童生徒へのわいせつ行為で懲戒免職になった教員に、失効した教員免許を再交付しない権限を都道府県教育委員会に与える新法が28日、成立した。識者はどうみるのか。


■子どもを守る視点が欠落、今後が焦点

 佐久間亜紀・慶応大学教授(教育学)の話 教職の専門性や教育する人の責務を考えれば、性暴力で処分された教員が教員免許の再交付を受けられないようにする道を開いた点は評価できる。しかし、疑いがあるときに、子どもを守りつつ事実関係を公正に確認する体制をどう整備するかは明確に定められていない。事実確認の面接そのものが子どもをさらに傷つける恐れがある中で、教員が認めない、あるいは警察が犯罪と判断しないようなケースについては、どのように事実関係を確認するのかが課題だ。

 新法18条は子どもから相談を受けた教職員に対しての通報義務を定め、さらに犯罪の疑いがあると思われるときは警察署への通報も規定している。しかし、通報義務を課せられて同僚を告発しなければならない教員を守るための制度は何も記されていない。

 また、14条では性被害防止教育の義務を幼稚園や学校に課した。今後は教育内容を学習指導要領にきちんと位置づける必要がある。2003年に東京都の養護学校で性被害を防止するための教育が「わいせつ」「不適切」などと一方的に非難され、当時の校長と教職員が処分された事件(最終的には裁判で処分は取り消し)があってから、教育現場では性教育が非常に行いにくくなっている。

 たとえば、家庭で親から性的虐待を受けている子どもが教室にいる可能性もあるため、授業の実施には入念な準備やアフターケアが必要となる。そのための体制づくりも急務だ。教職員と子どもが安心して学習に取り組める環境を整えなくては防止教育の実効性は上がらないだろう。

 性被害の防止には、子どもに人権があること、たとえ教員であっても子どもの人権を侵害してはならないことを教える教育活動の積み重ねが最も重要だ。そうした土台作りの教育や教員研修も必須だ。研修を効果的に実施するためにも、すでに教員が過労死するほど追い詰められている労働実態の改善が求められる。

 新法そのものは、加害教員を二度と教職につかせないという理念だけで、子どもを守る視点、告発した教員を守る視点、性被害を防ぐための土台づくりの視点が欠けていると言わざるを得ない。ただ、そうした視点は付帯決議には盛り込まれた。それらを実現するため、運用の詳細が決められる省令をどれだけきちんとしたものにできるかが、今後の焦点になる。(編集委員・大久保真紀)

朝日新聞社

5/28(金) 11:22 朝日新聞

18、19歳を「特定少年」と位置づけて刑事手続きを大人に近づける少年法改正を受け、法務省の有識者検討会は28日、少年院での矯正教育の見直しを提言する報告書をまとめた。特定少年に責任の自覚を促す新たな教育プログラムの導入が柱だ。来年4月に予定される改正法施行に向け、同省は具体的な内容を詰める。

 少年法の改正は、来年4月施行の改正民法で成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることを受けたもの。報告書は、特定少年に「法的・社会的立場が変わることを踏まえた責任の自覚」と「非行への反省」を促す教育プログラムの導入を提案した。そのうえで、「責任のみに偏らないよう権利と義務の両方をバランスよく教える必要がある」と指摘。成人として保護者の同意がなくても契約や結婚が可能になることに伴い、社会生活上の法的知識や課題を学ばせる必要性に言及した。

 また、現行の矯正教育のあり方にも注文を付けた。仕事に役立つ知識や技術の指導にあたり、時代に合わせてICT(情報通信技術)に関する技能を習得できる内容も含めることを提言。清掃などの社会貢献活動では、地域と連携して課題解決に関われる仕組みにし、活動の意義や目的を明確に意識できるようにすることを求めた。

 上川陽子法相は28日の記者会見で、「個々の成長の程度などを的確にアセスメントすることが重要。効果的な教育、指導が行えるよう速やかに検討する」と語った。

 改正少年法は特定少年について、家裁から検察官に原則送致(逆送)して刑事裁判にかける対象犯罪を拡大し、起訴段階で実名での報道を可能にする。少年の更生可能性に着目した保護処分のあり方も、罪に応じたものへと転換する。一方、適用年齢は20歳未満を維持し、事件を起こした全員をいったん家裁に送致して生い立ちや事件の背景を調べる仕組みは残す。21日に成立した。(伊藤和也)

朝日新聞社

5/28(金) 9:15 毎日新聞

 埼玉県教育委員会は27日、担任していた中学3年の女子生徒に、わいせつな画像を含むメッセージを無料通信アプリ「LINE(ライン)」で数千回送ったとして、県北部の公立中学校の男性教諭(37)を懲戒免職処分にした。

 県教委によると、男性教諭は2020年9月~21年1月、女子生徒にラインで女性の下着姿などのわいせつな画像を送ったり、食事に誘ったりした。女子生徒が1月、別の教員に相談して発覚。生徒は相談後、登校できなくなったという。

 男性教諭は事実関係を認め「元気づけたくてやった。軽率な行為でご迷惑をおかけし、申し訳ない」と話しているという。被害生徒の保護者の要望があったとして、教諭の氏名は公表しなかった。【岡礼子】

5/28(金) 7:00 AERAdot.

コロナ禍の外出自粛が続き、親子が家庭の中で“密”になる状態が続いている。子育て情報誌「AERA with Kids」で、「コロナ禍の家庭学習での声かけ」をテーマにインスタライブを行うと大きな反響があった。のべ692人が視聴し、子育て中の親たちから、プロ家庭教師また塾ソムリエで知られる西村則康さんに質問が相次いだ。AERA 2021年5月31日号ではその西村さんに、追加で詳しく話を聞いた。


*  *  *
──コロナ自粛で、イライラ。子どもの良くない態度が目につき、つい怒ってしまいます。

 親子が近い距離で長時間過ごせば、欠点が気になるのは当然です。子どもは本来、親の言うことなんて聞かないもの。自由奔放で、やりたいことを優先させるのが当たり前なのです。

 コロナ禍で親もストレスがたまっていると、少し注意するつもりが、普段なら言わないような暴言を吐いてしまったりする。まして勉強など教えようものなら必ずぶつかるでしょう。これでは親子関係が壊れます。

 子どもは一見、親からすると正しくない行動をとっているようでいて、実は真面目な義務感を持っています。自分がするべきことをわかっていながらそうできず、葛藤しているのです。

■イラッで6秒数える

 親に必要なのは、最低限の冷静さを保つこと。子どもにイラッとして頭に血が上ってきたと思ったらまずその場から離れる。叱ろうと思った瞬間、心の中でゆっくり6秒数える。この「6秒ルール」で心の棘が少し取れて言い方も変わるはずです。親が期待することの20%でも子どもが努力していたら、十分だと思って。それを認めてすかさずほめる。これこそが親子関係をよくする秘訣です。

──宿題さえなかなか進まない低学年の子ども。やっと終わればすぐに遊びに夢中。中学受験も考えているのに大丈夫でしょうか。

 勉強をしろしろと言葉で促しても子どもの心には届きません。子どもはむしろ、親が機嫌の良い雰囲気を醸しだしているかどうかに敏感に反応します。まずは帰宅した子を温かく迎え、ゆっくり話などしてください。自分から「遊びに行く前に宿題をしようかな」という気持ちにさせることが大切なのです。中学受験を考えているとしても、低学年のうちは計算力や語彙力を身につければ十分。過剰な家庭学習や、先取り学習は意味がありません。

学習には、適切な時期があります。小学校低学年は読み書き、計算を完璧にすればいい。4年生以降は抽象概念が扱われ、難易度が上がりますが、これを理解するには、未就学時期にどれだけ夢中で遊んだかが重要です。幼児期に日常生活の経験と遊びの中から、短期記憶や、図形の概念、速度や比重、密度や体積といったことを身体感覚で得たかどうかで、学習を理解するベースが育まれます。大切なのは、短くてもちゃんと集中して学習に向き合えているか。取り組む姿勢をみてあげてください。

■共働きに罪悪感は不要

──子どもにしっかり向き合いたいとは思うのですが、共働きなので、学習のフォローが十分にできず心配です。

 まず、「共働きが教育上よくない」という気持ちを持つのはやめてくださいね。親がいつも隣で勉強を見ることが、必ずしも子どもを良い方向に導くとは限りません。そもそも、学習とは、子ども自身が目的を持って自主的に取り組むべきもの。その訓練ができる環境を作れさえすれば、共働きでもまったく構わないのです。

 自立性を育むには、スモールステップが肝心です。低学年なら、まずは朝起きてカーテンを開けたり、新聞を取ってきたりという簡単な仕事を与えるだけでもいい。できたら必ず「ありがとう」と伝えること。親が帰宅する前に学校の宿題を終えていたら必ずほめて、「早く終えていたから、一緒に遊べるね」と団らんの時間を持つ。たとえ、宿題を終えてなくても「ノートを開いてやろうとしたんだねぇ」などと“努力の痕跡”を見つけて、すかさずほめる。時間はかかりますが、少しずつ導いていってください。

(構成/ライター・玉居子泰子)

※AERA 2021年5月31日号より抜粋

2021年5月27日MBSニュース
大阪府高槻市で今年2月、小学校の体育の授業で持久走をした5年生の男子児童が授業後に死亡したことがわかりました。男子児童は“マスクをして授業に臨んでいた”とみられます。  高槻市教育委員会によりますと、今年2月18日、市内の小学校での体育の授業で小学5年生の男子児童が、自らのペースで走る5分間走を行った後に体調が急変し病院に救急搬送後、死亡したということです。


 男子児童は当時、マスクを着けて体育の授業に臨んでいたとみられ、ペース走終了間際に他の児童から「男子児童が倒れている」と担任に伝えられ、様子がおかしいため保健室に搬送したということです。保健室へ搬送された時点ではマスクは男子児童のあごの部分にかかっていたということです。  小学校ではマスクの着用について「体育の時はマスクを外しても良い」と児童に伝えた一方で「新型コロナウイルスの感染などが心配な人は着けても良い」とも指導していたということです。  文部科学省のマニュアルでは原則、「体育の授業においては、マスクの着用は必要ありません」とされていて、高槻市のガイドラインでも「体育の授業中は生徒同士の間隔を2m以上空ければマスクの着用は必要としない」としています。

立憲民主党がとりまとめた「子ども総合基本法案」(通称)の概要が26日わかった。児童手当について対象を高校生まで広げるほか、子どもの貧困対策を担う「子ども省」設置の検討などが盛り込まれた。自民党の「こども庁」創設に対抗し、次期衆院選に向けた目玉公約として打ち出す。  現行の児童手当は原則、3歳未満は1人月1万5千円、3歳から中学校卒業までは同月1万円(第3子以降は1万5千円)。  立憲案では、支給対象を現行の中学生までから高校生までの子どもがいる世帯に拡大。支給額は高校生も月1万円を軸に検討している。同党議員は「高校生はご飯もよく食べるし、塾など学費もかかる」と話す。 ■「特例給付」復活も  また、中学生以下の子がいる年収1200万円以上の世帯に支給される月5千円の「特例給付」を廃止することが決まったが、法案ではこれを復活させる。  民主党政権時の2010年、所得制限のない「子ども手当」の支給が始まった。しかし、当時野党だった自民、公明との協議により、所得制限のある児童手当に戻った経緯がある。  財源については、将来への投資と位置づけて国債を発行することや、株式などの配当や売却益にかかる金融所得課税の強化などの案が検討されている。
2021年5月27日 朝日新聞

小学6年と中学3年を対象とした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が27日に行われる。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年は中止されたため、2年ぶりの実施。導入から丸14年が経過し、テスト結果をより重視する学校もみられる。過去問を解くなど事前準備が常態化し、本来の調査目的から逸脱している状況も。研究者は「学力の一部しか測れないにもかかわらず、現場だけが結果責任を問われ、追い詰められている」と訴える。
 「事前練習は当たり前。目標点を掲げて達成を要求する校長もいる」  福岡県内の公立小に勤める30代の女性教員はため息をつく。勤務校では歴代の小6の得点から「弱点」を分析し、市販の教材で何度も事前練習する。前任校では過去問が使われていた。  学校側が意識するのは、県教育委員会が各公立小中に作成を求める「学力向上プラン」。2017年度から全国学力テストの目標点を示した上で、課題の分析や授業の改善を促す。計画的な改善につなげるのが目的だが、女性教員は「とにかく結果を優先せざるを得ない状況になっている」。
 佐賀県内の公立小中では毎年、全教員参加の校内研修で自校の得点を分析し改善点を話し合う。50代の男性教員が勤める公立小では週3日、1時限前の20分間をドリルやプリント学習に充てる。男性教員は「子どもの朝の様子を観察し、ケアする時間も大切なのに」と釈然としない。  学校現場が対策に追われる現状を踏まえ、全国学力テストの在り方に疑問を呈する研究者は少なくない。国の専門家委員会委員で、福岡教育大の川口俊明准教授は「そもそも目的と手法にずれがある」と強調する。  国は(1)学校現場の指導改善(2)国の政策に反映-という二つの目的を掲げる。川口准教授は「指導のためなら、学校で行う普段のテストで十分。政策に生かすためなら、子どもの実態を正しく把握する必要がある。事前準備などの対策を取る学校がある中で、全員対象の現行調査は結果が偏る可能性が高い」と説明する。
世界各国の学力テストの状況を編著にまとめた福岡大の佐藤仁教授によると、日本では実施から約3カ月後に結果が学校現場に通知されるが、ドイツでは授業改善に特化したテストの結果が2~3週間後には教員に伝わる。ノルウェーでは学校ごとの得点を公表するが、子どもの家庭環境など数ある情報と一緒に示されるという。  佐藤教授は「『学力』の一部しか測れないにもかかわらず、日本にはテスト結果に敏感に反応する文化があり、責任は学校が問われる。行政、保護者、地域が一緒に改善点を考えることが大切だ」と提起する。
 子どもへの評価がテストに偏る中、居場所を失う子どもたちもいる。熊本県の公立小で特別支援学級を担任する50代男性教員は、問題用紙をくしゃくしゃにした子を目の当たりにした。「解けない子には嫌な時間でしかない。学力の意味がテストに矮小(わいしょう)化されていることは分かっていても、学校では学力を問い直す議論はない」 (四宮淳平、本田彩子)
全国学力テスト
 2007年、小6と中3の全員を対象に国語と算数(数学)の2教科でスタート。民主党政権が10年に抽出調査に切り替えたが、自民党政権下で13年に全員対象に戻った。現在は理科と英語(中3)も3年に1度行っている。18年8月には大阪市長が学力テストの成績を教員らの給与に反映させる意向を表明(後に撤回)し、学校現場への圧力や負担が問題となった。
2021年5月27日 西日本新聞

5/26(水) 毎日新聞
 東京都立高校の普通科の一般入試は、募集定員を男女に分けて設定しているため性別によって合格ラインが異なる。都教委は毎年30~40校を対象に是正措置を講じているものの、2015~20年に実施した入試では、対象校の約8割で女子の合格ラインが最終的に高かったことが、都教委の内部資料で判明した。1000点満点で最大243点上回るケースや、男子の合格最低点を上回った女子20人が不合格とされた事例もあった。  毎日新聞の調べでは、都立高は全国の都道府県立高校で唯一、男女別の定員があり、各校とも都内の公立中学の卒業生の男女比に応じて決まる。合否は中学校が提出する内申点(300点満点)と、国数英理社の筆記試験(700点満点)の合計で決めるが、合格ラインは男女で異なる。  著しい格差を防ぐため、都教委は1998年の入試から、特に差が大きい傾向にある高校を対象に是正措置を行っている。定員の9割までは男女別に合否を判定し、残り1割は男女合同の順位で合格者を決めるもので、近年は普通科高校(約110校)のうち30~40校程度で実施している。  都教委はその効果を確認するため合格ラインの変化を毎年調査している。毎日新聞が調査結果の資料などの情報公開を求めたところ、都教委は今年3月、15~20年入試の是正措置の対象校(延べ199校)の回答用紙について、校名の特定につながる情報を伏せる形で開示した。このうち無回答や明らかに誤記と考えられるものを除く184校の男女差を毎日新聞が分析した。  是正前は約9割の170校で女子の合格最低点が高く、男子との差は、①100点以上=27校②50~99点=41校③40~49点=31校④30~39点=27校⑤20~29点=26校⑥10~19点=8校⑦9点以下=10校。最大で女子の方が426点高い学校もあった。残り1割は男女が同水準か、男子の合格最低点の方が高かった。  是正後も約8割の153校で女子が上回った。男子との差は、①5校②14校③5校④13校⑤34校⑥36校⑦46校と全体的に縮小したものの、それでも最大で243点の差がみられるなど是正につながっていないケースもあった。  毎日新聞は、是正措置を講じていない高校の男女別の合格最低点についても情報公開請求したが、都教委は「学校の順位付けが可能となり、競争が助長される」などとして不開示にした。  男女で合格ラインに差がある現状について、都教委の担当者は「入試が男女別であることは周知しているので、受験生は合否ラインが異なることを理解した上で受けているはずだ」と制度自体に問題はないとの認識だが、「現在の是正措置が完璧ではないことは認識している。世の中の情勢に合わせて改善策を考えていきたい」と話した。  文部科学省は「一般論としては、合理的な理由なく性別によって異なる扱いを受けるのは望ましくない」としつつ、「男女別定員制は東京都が『合理的』と判断して採用しているものと考えている」と静観する。【大久保昂】

5/26(水) 10:00 毎日新聞

長野県内の高校に通う息子が、中学生の時に剣道部の顧問から受けた体罰に苦しみ続けていると訴える母親の手記が、26日発刊の「長野の子ども白書」に掲載された。母親は、手記を通じ「多くの人に事実を知ってもらうことは、息子の名誉を回復することにつながる。息子が前を向くきっかけにしたい」と願っている。【坂根真理】

 ◇「長野子ども白書」に手記

 記者が5月下旬、取材に訪れると、母親は、剣道の大会で優勝した時のトロフィーや盾が並ぶ自宅の一室で悔しさをにじませた。「高3になっても、中学時代の体験を引きずり、目標を持てず時間が止まったままです。本人は相当深い傷を負っていて、今も前に進めず苦しそう」

 息子は元顧問による体罰の後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などを発症し、3年たった今も学業や生活に支障を来している。元顧問から浴びせられた暴言などが毎日のようによみがえるという。家族にいら立ちをぶつけることもある。

 約10年前、小学1年生で剣道を始めた。恩師や仲間と共に剣道に打ち込む充実した日々を送り、県内の大会で優勝するほどの実力を身に付けた。公立中の剣道部では主将を務めた。そして中学3年間の集大成として、夏の県大会に向けて練習に励んでいるように母親には見えた――。

 ある日、母親が仕事を終えて帰宅すると、息子がボロボロと涙を流しながら、「死んで終わりにしたいと思った」と打ち明けた。

 あふれる涙を抑えながら、声を絞り出した。元顧問から「バカキャプテン」「クソ」とみんなの前で呼ばれ、「消えろ」「必要ない」と人格を否定される言葉を浴び続けた経験を語った。

 夏の県大会の直前に練習を禁じられ、それでも練習場に向かうと、他の部員から一方的に攻撃を受けるだけの役割をさせられた。「道具のような役割をさせられて屈辱的な思いをした」という。息子は「帰り道に川に飛び込んで自殺しようとした」とまで語った。

 指導によって追い詰められた子どもたちが自殺することが、たびたび問題になる。母親は「指導死といわれる自殺は、教師から逃げることのできない生徒が最後のエネルギーを振り絞り、苦しみの暗いトンネルから出ようとする行為なんです。『死ねばこれで終わりにできる』と言う息子の思いがひしひしと伝わってきた」と振り返る。

 体罰の訴えを受け、県教委は元顧問を減給10分の1(2カ月)の懲戒処分にした。元顧問は県教委の調査に対し「大会まで残された時間が少なく焦りを感じるようになり、自制することができなかった」と話したという。ただ、県教委が公表した主な処分理由は、元顧問が防具をつけていない部分を竹刀で複数回たたくなどの体罰を加えたということだけだった。

 母親は、十分な調査をしてすべての体罰を明らかにし、再発防止につなげてほしいと、今年3月、県の第三者機関「子ども支援委員会」に人権救済を申し立てた。

 手記を寄せたのは、子どもを取り巻く課題をまとめた「長野の子ども白書」の2021年版。白書のことは新聞記事で知り「手記を書きたい」と連絡を取った。体罰が子どもに与える影響の深刻さを知ってもらい、子どもの人権が守られる教育現場になってほしいとの思いからだ。

 手記は「子どもの人権はどこで守られるのか 『教育』の名を借りた壮絶な人権侵害」のタイトルで、4ページにわたって体罰の経過や親子の苦しみを記した。「最大の人権侵害は、教師が身勝手な理由で部員を活動から排除し、総仕上げに向かっていた練習の場を奪ったこと」と訴える。

 取材に対して、母親は語る。「生徒と教師という絶対的な主従関係の中で、子どもは声を上げられなかった。親に伝えれば、顧問から『もう教えてやらない』と言われたり、執拗(しつよう)に暴言を受けたり、活動から排除されたりする不利益を受けるのを恐れ、顧問に服従していった。体罰や暴言は教員による、教育の名を借りた人権侵害だ。子どもの人権は教育現場でこそ守られなければいけない」

 一方、県教委は取材に対し「子ども支援委員会が調査中のため、コメントを差し控えたい」としている。

   ◇

 子ども白書は2012年から毎年5月に発行し、今年で10号の節目を迎えた。子どもや若者を取り巻く現状や課題を多くの人に知ってもらおうと、子どもを守る市民団体の関係者らが白書を発行してきた。

 今回の白書の執筆者は、学校の教員や専門家ら100人を超える。4つの特集を組み、教師から体罰を受けた生徒の母親の手記は特集「子どもの権利を守るとは」に盛り込まれ、他に子どもの権利に関する条例を作った松本市の取り組みなども紹介する。コロナ禍の学校現場などで見えた子どもたちの実態や、子育て家庭の貧困の広がりなども特集した。

 編集委員会事務局代表の小林啓子さんは、「児童憲章が定められてから70年の今年、その理念に立ち返るべきだ。子どもの権利条約を生かした政策や事業を行うなど具体化していかないと、子どもを取り巻く問題は解決しない。白書をきっかけに子どもについて複合的に考えてもらいたい」と話した。

5/26(水) 9:16 PRESIDENT Online

なぜ日本では多くの子供たちが「不登校」で悩んでいるのか。臨床心理士の武田信子さんは「子供を取り巻く環境を調整するだけで解決する場合がある。だが、日本ではカウンセラーにすら『環境に問題があるかもしれない』という前提認識がない」という――。

【この記事の画像を見る】

 ※本稿は、武田信子『やりすぎ教育』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

■いじめはどこの国でもあるが…

 私は不登校や引きこもりの問題がほとんど起きていない海外の学校をたくさん訪問してきました。世界各国から日本に子どもの専門家を招き、日本の学校を見学してもらい、さまざまなコメントをいただきました。

 アジア圏には日本に似た競争的な教育を行っている国がいくつかありましたが、それ以外の海外の学校では、多様な子どもたちが多彩な学習方法で学んでいました。先生や授業への不満をゲストに言うことも許されていました。多くの学校で宿題や画一的な評価はほとんどなく、受験も厳しくなく、生徒たちの比較は行われていませんでした。いじめはどこの国でもありましたが、不登校や引きこもりの現象はほぼありませんでした。

 オランダのアムステルダム自由大学では、2006年に日本とオランダの教育の比較をレクチャーする機会をいただきましたが、日本の受験を取り巻く状況を説明すると、皆さん信じられないという顔をしておられました。

 また、日本によく来ることがあるというカナダの教師教育者は、日本の学校教育についてはコメントすることができないし、何かアドバイスしようという気はないと首を横に振るのみでした。

 ここでは、日本の学校教育の中で問題を抱えた子どもたちの事例(事実を改変して構成)をいくつか挙げてみましょう。

■問題は子どもではなく環境にあるかもしれない

----------
事例1
高校1年生女子。入学してみたらとても規則が厳しくて先生たちの言うことが理不尽で納得できないから退学したいと言います。話を聞いてみると本当に学校の対応は非合理で、退学したいと思うのももっともに思われました。でも母親はせっかく入学した学校を退学したいという自分の子どもが理解できません。不登校状態が続いているので、心の問題ということで、親子でカウンセリングに来たわけです。
私はこの「クライエント」は非常に健康な方だと思いましたので、カウンセリング終了後に先輩にそう言いました。そして叱られました。高校生にとって学校という場所は友達に出会ったり勉強したりする大切な場所で、カウンセラーはそこに行けるようにするのが仕事だろう。子どもの言うことを鵜吞みにしてどうするのだということでした。
彼女は自分にはカウンセリングは必要ないと言って3回目から来なくなりました。のちに学校は退学し、母親のカウンセリングが継続されました。私は今でも、女子生徒の退学は正しい選択で彼女は健全な方だったと思っています。

事例2
ある高校生の男の子は、有名進学校に入学したものの学校に行けなくなってしまい、家に引きこもってずっとネットにはまっていました。知人に紹介された発展途上国でのワークキャンプに参加したところ、徐々に自分の知らない熱い人間関係の中で心の傷が癒やされ、人と自分への信頼を取り戻し、帰国してからもキャンプで知り合った仲間たちとの関係を続けて勉強を始め、希望する大学に入りました。
彼に必要だったのは、カウンセリングや医療よりも、広い世界を知り、温かい人たちに出会い、汗を流して働く体験だったようです。

事例3
ある小学校1年生の男の子は、コロナ禍で4月からしばらく学校に行くことができず、夏前に登校が始まってから先生や友達との関係がうまく築けないまま、まもなく学校に行けなくなってしまいました。家で暴れたり親から離そうとすると泣き叫んで手がつけられなくなったりしたため、カウンセリングを受けたところ、発達障害と言われて投薬され、療育を勧められました。
たまたま私と出会う機会があって親子の様子を見ていたら、お母さんがとても優しい方で、彼の言い分を聞いて何とか対応しようとしています。いいお母さんでいよう、彼を傷つけないようにしよう、叱らないようにしようと必死の様子を見て、学校の担任の対応との落差が激しかったのだろうと思いました。そして、男の子が自立できるようにお母さんのほうから離れていくことや環境要因の調整などを数分アドバイスしたところ、2週間後に連絡があり、子どもが自己コントロールができるようになってきて、薬も療育も必要なくなったとのことでした。
----------

 これらの事例からわかることは何でしょうか。心の問題や発達の障害であると言われていることが、実はその子どもの問題というよりも「環境調整」で改善する問題である場合があるということです。

■マルトリートメントは社会構造の中で発生している

 カウンセラーたちは話を聴くトレーニングを受けてはいても、必ずしも環境調整の技法は学んでいません。カウンセラー自身の価値観が現在の日本の状況から自由でないと、話は閉じてしまって解決の方向には向かわないし、現象や症状を抑えることに気が向いて、子どもが育つプロセスで子どもの心と現実とのズレやマルトリートメント(日本語では時に「虐待」と訳されます)が起きていることに気づくことができないのです。

 問題を抱えた親子と接する機会の多い対人援助専門職が、個人の問題が社会のどんな構造の中で起きているのかを分析して改革への提言を発信しなければ、あちこちで起きているマルトリートメントは、個別の問題として対応されるだけで、社会的に継続してしまうのではないかと思います。

 人は生きている限り、あらゆるところで学んでいます。赤ちゃんは胎内にいるときから学びを重ねているのです。そして出会ったあらゆる人、こと、ものから生涯学び続けます。就学以降の学びは、それ以前の乳幼児期の発達の上に乗る形で進みます。

 でも、多くの人が、子どもは学校に入学したときから学び始め、学校を卒業すると学びが一段落すると思っています。少なくとも、学校での学びについていけるように準備して、宿題で追いついて、補習で定着させなければと思うのです。

■大人たちの「よかれと思って」が子どもを苦しめる

 たしかに学校は子どもの社会化のために必要なことを勉強する場であり、国民として生活を始めていくために必要なことを仲間と共に学ぶ場です。でも人の学びはそれに留まりません。子どもたちは24時間、家庭と学校と地域の3領域の生活の中で何かを学んでおり、学校を修了して大人になっても死ぬまで学び続けます。

 とはいえ、今は地域で過ごす時間がなくなって、家庭と学校の往復になっている子どもたちが少なくありません。さらに家庭では十分に養育できないということで、学校が託児所のようになって、部活や放課後子ども教室も含めて、あらゆることを引き受けるようになっています。

 大人が人間の体と心と脳の発達の流れを理解していれば、短い学校教育期間にすべてのコンテンツを詰め込もうとはしないはずですが、この情報化社会において、あらゆる人たちが、自分が大切だと思うこと、たとえば、英語、ICT、キャリア教育、福祉、ボランティア活動、金融教育、消費者教育、育児、昔遊び、読み聞かせ……を学校教育のコンテンツとして必須だと主張し、入れ込もうとします。

 それらが必要でないとは思いません。でも、そんなに詰め込まれても、ただ先生の話が長くなって休み時間が短くなるだけで、家庭や地域で実体験の少ない子どもたちには必要性の実感がわかず、迷惑なのです。子どもたちはフォアグラを作るために強制給餌されるアヒルにはなりたくないのです。

 子どもへのマルトリートメントが継続してきたのは、誰か個人の悪者がいるということではなく、社会の急速な流れの中で大人たちがよかれと思ってやってきたことが少しずつズレたり、問題に気がつかないまま進んできてしまったりした結果であるということが、おわかりいただけたでしょうか。



----------
武田 信子(たけだ・のぶこ)
臨床心理士
ジェイス代表理事。元武蔵大学人文学部教授。臨床心理学、教師教育学を専門とし、長年、子どもの養育環境の改善に取り組む。東京大学大学院教育学研究科満期退学。トロント大学、アムステルダム自由大学大学院で客員教授、東京大学等で非常勤講師を歴任。著書に『社会で子どもを育てる』(平凡社新書)、編著に『教育相談』(学文社)、共編著に『子ども家庭福祉の世界』(有斐閣アルマ)、『教員のためのリフレクション・ワークブック』(学事出版)、監訳に『ダイレクト・ソーシャルワークハンドブック』(明石書店)など。
----------

臨床心理士 武田 信子

5/26(水) 8:16 現代ビジネス

「不登校を積極的に認めていいものなのか」という相談を10年ほど前から度々持ちかけられる。

【写真】日本の学校は地獄か…いじめ自殺で市教委がとった残酷すぎる言動

 筆者はさまざまな児童福祉の現場で不登校歴の長い子どもたちの就職活動や自立支援を知り、学校で得られることは勉強だけではないと思い至る機会があった。

 特に自尊心や自信は内から湧くものではない。何かを成し遂げた経験を積み重ねる中で自信、「新しい挑戦に立ち向かいたい」という意欲、「できるようになったことがいくつもあるから今回も大丈夫だろう」という安心感が育つ。

 しかし、学校での価値基準は勉強や部活など偏りがあり、子どもそれぞれの才能が評価され誰にとっても居心地のいい場所であるとは限らない。

 岐阜市にこの春、不登校児専門公立中学校が開校した。自治体主導としては初の公立不登校特例校だという。説明会には40名定員のところ120家族が参加したそうだ。

 無料で通える学校の選択肢があって、子どもが「見守られている」「応援されている」と感じる大人たちのもとで生き生きと育つことができる場所が見つかるのがいいと思う。

 筆者が4年前から通っているパリの北にある個別支援校には、一般の学校に行きたくない10歳から17歳までの子どもが来る。はじめは勉強はしない。自分の選んだ活動をする中で自信をつけると、自分から「勉強をしたい」と言うようになり、あっという間に追いついて自分で選んだ一般の学校に戻っていく。

 中学校から専門課程の教育をする学校もあり、学校の選択肢は1つではない。その過程で突出した才能を発揮することも度々だ。皆が事務職や研究者になるわけではない、世の中には芸術家も運転手も様々な職業があり、様々な才能が必要だ。与えられた課題に取り組むだけではないいろんな学びの場があることの方が自然なのではないだろうか。

 パリの北にある個別支援学校について紹介する。

学校は学ぶだけでなくリカバリーする場所
 フランスの学校は「月に半日を4回以上休んだ生徒」は県の担当部署に報告し、子どもが休む理由を理解し対応しなければならないのでかなり早い段階で不登校の対応がとられる。

 休みは「何かうまくいっていないことがある症状」とされているので、無理やり学校に来させるのではなく、子どもと親のケアをする。そのために児童福祉の専門職が学校に配置され子どもと家族とのやりとりを担当し、教師は学科だけを担当する(参照「フランスの学校は“いじめや不登校”にどう立ち向っているのか」)。

 3歳から義務教育である理由は、6歳時点の語彙数に子どもによって大きな差があり、その差が16歳までの教育では埋めきれていないということがわかったため、3歳から基礎的な学習の機会を作るとともに、全ての子どもに福祉が行き届いているかチェックできるようにするためでもある。

 自分にとって生き生きと過ごせる場所を子ども自身が選ぶことが奨励されている。別の学校に転校したり、小学校からある全寮制の学校を選ぶ子どももいるし、中学校からはスポーツや語学を得意としている学校や必ずしも最寄りでなくても特徴がある学校に通うこともある。全て公立校で無料で通える。16歳から18歳で経済的に自立できることを目指す職業高校も無料である。

 児童相談所に手続きをしてもらうと、きめ細やかな取り組みをしている私立の学校に通うことや、専門家の治療も無料になる。

 筆者が今回紹介する個別支援校も児童相談所への相談をきっかけとして来る子どもが多く、県の財源で運営している。週7日、365日開校している理由は、休みの間に元気がなくなる子ども、休みの間過ごす場所を必要としている子どもがいるからだ。

 不登校期間があった理由としては、両親が離婚し離れて住む親の間の行き来と転校を繰り返したこと、施設入所しても親の病気が心配で脱走してきたことなどさまざまで、知能指数が高すぎて学校の授業が耐えられなかった子どもも一定数いる。

 子どもたちは個別支援学校に到着した当初は、馴染みのある空間が限られ、偏見があり、問題解決の道具も多く持ち合わせていないことが多い。

 例えば地下鉄で20分の首都パリに行ったことがなかったり、「パリの人間は大嫌い」と言ったりするが、それはそれだけ交流や行動の範囲が狭かったということである。自信がなく、自身や相手や出来事に失望する経験をしてきていると「変化していくこと」に対する意欲が少ない。

 職員室には「教育は世界を変える一番強い武器である」というマンデラの言葉が貼ってある。

「何かを成し遂げた経験を積み重ねる」
写真:現代ビジネス

 入所するとまずその子どもの希望に合った時間割が組まれる。

 脳を活性化させ「初めてのことに取り組んでみたい」「もっと上手になりたい」という気持ちを十分育てるためである。「できなかったことができるようになる」経験を重ねる中で自信をつけ、挑戦したい内容が増える。その流れの中で自然に勉強に再度取り組みたい意欲がわく。

 例えば、ダンスに憧れていた子どもがプロに習い、上達し人前でダンスができるようになる頃には、他の活動全般も意欲的になっているという。「得意分野を見つけなさい」などと言うことがあるが、自分の好きなことを見つけたり取り組む機会が誰にでも与えられているとは限らない。元気がない子どもにこそたくさんのチャンスを与えるのがフランスの福祉の考え方だ。

 何かを成し遂げた経験、「達成感」を積み重ねていけば、子どもは自分から「勉強やってみたい」と取り組むようになる。先生と一緒に勉強の遅れを取り戻し、通信教育で学び、準備ができた段階で自分で選んだ個別支援でない高校に入るという流れで子どもたちは巣立っていく。

 高校に入る直前の段階になると勉強時間も増える。16歳のアブデル君の例。

 彼はパソコンやゲームが得意なので、プロのゲームプログラマーのもとに毎週月曜通い終日プログラミングをして自身のゲームを完成させた。プロの人たちと一緒の環境でプレッシャーに打ち勝つことが試練であった。

 しかし、一年以上通うなかで、漠然とした夢だったプログラマーというものがどのような仕事か理解し、それを仕事とするために自分がするべきことも明確になった。

 また、「キックボクシングを習いたい」と先生と一緒に毎週通うなかで先生との絆も深めた。習い事は先生自身も一緒に申し込みして参加する。職業研修やバイトも最初の数回は一緒に最初から最後まで作業して一番近くで応援する。

 一緒に笑い、一緒に思い出を積み重ね、先生はその中で子どもをより良く知りサポートする。一緒に行き帰りする時間が子どもの打ち明け話の時間になったりもする。

 この学校では演劇のみが全員共通科目で、舞台俳優から演劇を習う。

 年度末に行う発表会は、子どもたちが人前で自身を表現できるようになること、自分の得意な役柄を見つけて演じ皆に賞賛されること、皆で助け合い作品を作りあげること、大きな成長を見ることのできる機会となっている。

 また、演技の中で感情のコントロール、態度、姿勢、あり方を学ぶ。目指している自分の姿を実現するために今自分が何をしなければならないか考える機会になる。手の空いた先生全員が一緒に演劇に参加するのは言うまでもない。

 同じ敷地にある「親学校」に通う親たちも演劇には一緒に参加する。それは子どもが施設に入っているなど子育てに悩みを抱えた親たちが、家庭内の問題と向き合ったり、議論の仕方を練習したり、プロにヘアメイクしてもらい自分をケアする時間をとったり、文化的活動に参加したりする学校である。同世代の子どもを持つ親たちの悩みや生き方に触れ交流するのも子どもたちにとっては貴重な時間となっている。

 修学旅行も子どもに合わせ個別に実現する。例えば父親について顔も名前もわからないがセネガル人らしいという子どもはセネガルへ半年間の留学、親友と一緒の時間を過ごしたい二人は二人旅、心理士とゆっくり話したい子どもは心理士と旅行に出かけた。日本に憧れていた子どもは日本のフリースクールに三週間の留学をした。

 先生は子どもの希望を実現する過程が重要であると言う。大人に失望してきた経験のある子どもは「この人は応えてくれるのか?」ということをいつも気にしている。自分の力になろうとしてくれる大人が世の中にいることを知ること、そして、自分がしたいことを実現させていけた経験は大きな強みになる。

「社会的親」に出会うこと
 フランスの児童福祉の現場には外部の力を積極的に利用しているところが多くある。この個別支援学校にはそのためのコーディネーターもいる。

 研究者は脳科学者、心理学、教育学、社会学など様々な分野から調査に出入りしていて、研究成果を職員にフィードバックして欲しいと期待されていた。食堂は近隣のオフィスで働く人たちにも開かれていて、近隣の銀行は従業員パーティーで子どもたちの描いた絵を展示販売してくれたりする。

 なるべく多くの大人に出会うことが子どもたちにとって重要だと考えられている。子どもたちは大人たちから少しずつ生き方のヒントを得て、教育や職業の世界で生きていくのに必要な考え方や「あり方」を受け継いでいく。

 「親戚のおじさん、おばさん」のように子どもが頼れる大人との関係構築を助け、卒業したあとも一人ぼっちにならず相談できる人をたくさん用意しておくことも先生たちの仕事の1つとされていて「電話帳作り」と言う。

 私も通ううちに子どもたちの要望に応えて食堂で日本食を作ったり、子どもたちをラーメン屋さんに連れて行ったり、イベント時に在仏日本企業の協力を仰いだり、子どもの日本留学を実現したりするようになり、自分の子どもと演劇や博物館や動物園に行くときはここの子どもたちも連れて行くのが日常になった。卒業してからうまくいかないとき、先生には連絡しづらくても外部者である私には相談できることもある。

 自分が期待することを父母から全て得られなくても「出会った人が与えてくれるものは全て受け取りなさい」「『社会的親』を見つけて相談したりいい影響をもらいなさい」と子どもたちは先生に言われていた。

 先生が両親に電話をし許可を得て子どもが「わーい!」と喜ぶ光景は学校が親たちに信頼されているからこそだろう。「子どもたちは世の中が不公平なことはとっくに知っている。君が与えられたものは、君が関係性を築けたということだから受け取りなさいと言う」と先生は話す。

困難を抱えた人にこそ最高のものを
政府の経済社会環境委員2018年報告書の表紙。重い荷物を持ち困難の多い道を歩まざるを得ない子どもについて描いている

 子どもによっては家族の困難な歴史、今おかれている家庭環境の厳しさなど、重い荷物を背負わされている。親の中には、自身の親とも夫とも関係が悪く、精神的な病を抱え「自分にはこの子しかいないから大人になってほしくない、友達を作ってほしくない」と言う人もいる。

 子どもたちが成長する中で親との役割の交代も見られ、子どもが親のことを心配し親の代わりに行政手続きをしたりお金の工面をしたり話の聞き役になり、親戚に対し親子の立場を挽回させるため「なんとしても自分が成功しなければならない」というプレッシャーを背負う姿も見られる。

 重い荷物を背負わされている子どもにとって「困難を抱えた人にこそ最高のものを」というモットーで手厚い支援があっても、元から困難が少ない人より有利になるわけではない。

 安心できる環境で育ち文化的活動をしてきて学校で学びを強化できる子どもだけでなく、両親が喧嘩をしていたり親が病気だったりして心配をして育ち、文化的な活動をする余裕もなく学校に出席させられている、日常と学校生活が乖離している子どももいる。

 そのような子どもたちにとって、家族の安全の方が授業より大事だったりする。学校で勉強だけでなく子どもが安心・安全が得られるための支援があることがまずは大事だ。

 そして、学びにおいても評価基準を勉強に限定することなく、成功体験を積み重ね自信を育てられる機会がいくつもあること、多様な子どもが多様な才能を育てていけるような学校の選択肢があることが重要である。

 個別支援校の子どもたちは開校時間のずっと前から校門前にいるし、土日もはりきって来る。行きたい場所であれば子どもたちは来る。

 チャンスは平等にはないし、就労の機会も決して平等ではない。それでも学校が子どもの福祉も支え、暮らしを改善していける機会になり、さまざまな選択肢を用意して子どもそれぞれが開花していける学びが実現できたら、幸せな子ども、幸せな大人を増やしていくことになると思う。

----------
注:筆者はパリ市と、郊外のセーヌ・サン・ドニ県で調査している。他の県で運用が同じとは限らない。
引用:
ニュース記事
https://forbesjapan.com/articles/detail/40608
Conseil économique, social et environnemental, section des affaires sociales et de la santé, 2018, Prévenir les ruptures dans les parcours en protection de l’enfance.
----------

安發 明子(在パリ 通訳/コーディネーター/ライター)

5/25(火) 16:01 京都新聞

事件を起こした18、19歳を「特定少年」と位置づけ、厳罰化を図る改正少年法が成立した。

 家裁から検察官に送致(逆送)し、20歳以上と同じ刑事手続きを取る対象の事件を拡大する。

 民法の成人年齢が18歳に引き下げられるのに合わせ、来年4月に施行される。

 成長途上にある少年の立ち直りに主眼を置く少年法の目的に照らし、慎重な運用が求められる。

 改正法では、全ての少年事件を家裁に送り、家庭環境など事件の背景を心理学の専門家らが調査する仕組みは維持される。

 ただ、逆送の対象となる事件に、これまでの殺人や傷害致死だけでなく、強盗や強制性交、現住建造物等放火などが加わる。

 また、実際に罪を犯していなくても、その恐れがあると認めた「虞犯(ぐはん)」について、家裁送致の対象から除外される。刑の執行後に認められてきた国家資格取得制限の緩和措置も原則なくなる。

 これらの厳罰化はどれだけ効果が期待できるのだろうか。

 少年事件件数は人口比で、ピークだった1981年と比べ、2019年は6分の1まで減少している。犯罪白書によると、少年院収容者のうち3人に1人が虐待を経験し、家庭環境が少なからず非行に影響しているとみられる。

 改正法の審議では、刑事罰を科して刑務所に収監するより、少年院送致や保護観察といった「保護処分」で非行少年を再教育し、更生させることを重視する意見が強く打ち出された。

 少年の立ち直りの機会を奪い、社会復帰を妨げることがないか、見極めが必要だ。逆送の可否の判断にあたっては、家裁の審議がいっそう重要になろう。

 一方、被害者遺族からは、18歳以上は成人になるので少年法の対象から外すべきとの声もあった。加害者の更生が十分でないとの不信感が根強く、罪に見合った責任を取ることは「厳罰化ではなく適正化」との思いが示された。

 こうした声も真摯(しんし)に受け止め、現行の矯正教育に課題はないのか、見直していくことが必要だ。

 改正法では、これまで禁じられてきた本人を特定する報道が起訴段階で可能となった。更生の可能性を十分に考慮した判断が報道機関にも問われる。

 改正法の付則は、施行5年後に見直すとした。今後は、社会に出た後の再犯率などにどのように影響するのか、冷静に見定めなくてはならない。

コロナ禍でバイトを辞めざるをえなくなったという人も少なくないだろう。それは同情すべきことではあるが、バイトが無くなった結果、親に依存するようになり、挙げ句の果てに“モンスター化”する子供もいるという。そんな状態に陥った21才の息子に怒り爆発させたのは、49才の主婦Aさん。彼女が息子にとった行動とは? Aさんが告白する。
 * * *  小さい頃はかわいくても、大学生にもなると、粗大ゴミみたいじゃありませんか? 息子って。え? うちだけ?  21才のうちの息子は、何事にもやる気がなくて、毎日ゴロゴロゴロゴロ……。授業もリモートのせいか、ほとんど受けていない様子。  今年は就職活動だっていうのに、焦る様子も準備する様子もなく、毎日お菓子を食べながらゲーム三昧。コロナ禍で飲食店のアルバイトを解雇されてからは、探しもしないくせに、 「どうせ雇ってもらえない」  と、働きにも行きません。家にいるならせめてもと、「風呂上がりに床を拭く」「リビングでお菓子を食べたら袋を片づけ、食べカスの掃除をする」という2つだけでもするよう、約束をさせたのですが、これすらやらず、あろうことか、 「っつーか、それくらい母さんがやれよ、専業主婦だろ」  などとほざいたんです。これにはさすがに怒り心頭。そこで、私も考えました。風呂の床が濡れていたら、息子のお気に入りの高級シャツで拭き、そのまま洗わず放置。ピンク汚れを、こびりつけてやりました。さらに、ソファの隙間に挟まったお菓子のカスはすべて回収して保存。ある程度たまってから、 「母の怒りを食らえ!」  と、寝ている息子の顔の上に振りかけてやりました。  さすがにこれには驚いたようで、居間でお菓子を食べなくなりましたが……。かといって積極的に掃除をするわけではないので、もうそろそろしたら、またぶっかけようかと思っています。 取材・文/前川亜紀 ※女性セブン2021年6月3日号

5/25(火) 12:11配信 朝日新聞

全国一斉の長期休校、大都市圏では緊急事態宣言下で初の本番を迎えた大学入学共通テスト、一部大学の個別試験中止…と、異例ずくめだった2021年度大学入試。そんな「逆境」の中で合格実績を伸ばしたのは、どの高校だったのでしょうか。大学通信の安田賢治常務が解説します。(とくに断りのない限り、本連載の合格者数は、併願可能な私立大で複数の学部・入試方式での合格者を重複して数える「延べ合格者数」=解説はこちら https://www.asahi.com/edua/article/14336217 =を採用しています)

東大の一般選抜は、学部別ではなく科類別に行われている。文系は文科1~3類、理系は理科1~3類だ。前期課程(1~2年)では原則として科類別にクラスが編成され、外国語や情報処理、基礎講義などの教養教育が中心に行われる。後期課程(3~4年)で学部・学科に分かれ、本格的に専門分野を学ぶ。この「進学選択」制度(通称「進学振り分け」、略して「進振り」)により、多くの学生にとっては3年生からキャンパスも駒場から本郷に移る。

かつては医学部医学科へ進学できるのは理科2・3類のみといった制限があったが、2006年度の新入生から、制度上は全科類から全学部に進学できるようになった。文系の主な進学先学部を見ると、文1は法学部、文2は経済学部、文3は文学部や教育学部のほか、駒場にある教養学部(後期課程)への進学者も多い。

東大文系合格者数のトップは開成(東京)の49人だ。2位は麻布(東京)の43人、3位は聖光学院(神奈川)の40人だった。東京圏以外では4位の西大和学園(奈良)が36人でトップ、7位の灘(兵庫)が29人で続く。公立トップは5位の日比谷(東京)の34人だった。

2次試験数学の易化が影響か
トップ10では合格者数が減った中高一貫校が目につく。首位の開成は昨年に比べ13人減、8位の筑波大附駒場(東京)は19人減、同じく8位タイの桜蔭(東京)は10人減だ。そのぶん、公立高の合格者数が増えている。大手予備校によると、今年は2次試験の文系の数学が易しかったという。中高一貫生が得意な数学であまり差がつかず、数学が苦手とされる公立高生、女子の躍進につながったとみられる。

日比谷の文系合格者数は昨年に比べて15人増の34人だ。しかも東大合格者63人の半分以上を占めている。11位の埼玉の浦和・県立も昨年より7人増の24人で、全合格者46人の5割以上を占める。同様に22位の茨城の水戸第一も昨年より9人増えて13人が合格し、全合格者23人の6割近くを占めている。合格者が増えるだけでなく、全合格者に占める文系の割合も高くなっているのが特徴だ。東大の文系、理系の募集人員の割合は5:7だから理系のほうが多いのだが、上位の公立高では文系合格者が多いところが目立つ。

科類別にみると、文1トップは開成の25人、2位は筑波大附駒場の20人、3位は麻布の19人だ。文2は聖光学院が23人でトップ、2位は西大和学園の15人、3位は開成の13人だった。文3トップは日比谷の18人、2位は渋谷教育学園幕張(千葉)の14人、3位が西大和学園の12人で、共学校がトップ3を占めた。

安田賢治 大学通信常務取締役

5/25(火) 10:20 中国新聞デジタル

新型コロナウイルスの流行が長引く中、中学生の息子がうつ状態に陥り、学校に行けなくなった―。無料通信アプリLINE(ライン)に、広島県内の40代の女性から声が届いた。こんなとき、どうしたらいいのか。ほかの子どもたちの心にも異変があるのか。現場を訪ねた。

 「思春期だからかと思ったら、うつと言われ、驚いた」と女性は言う。息子は中学1年だった昨年12月、腹痛を訴えて学校を休んだ。回復後も欠席を繰り返し、学年末から不登校に。家ではイライラして家具に当たり、ふさぎ込んで部屋にこもった。一人になることを怖がるときもあった。

 小学校までマイペースで元気だったことを思うと、中学の新たな環境がストレスだったのかもしれない。課題の量も多く、担任との折り合いも悪かった。「それに、コロナ禍が加わった」と女性。長期休校は、学校に慣れるのを難しくした。楽しみだった県外の親戚宅への旅行も中止が続いた。「息抜きもできず、しんどさが増したのかもしれない」と振り返り、「ほかの子どもたちのことも心配になっています」

大人もしんどい
 そんな女性の懸念を、広島市内の小中でスクールカウンセラーを務める県公認心理師協会の菅武史理事(51)にぶつけた。すると「元気な子がエネルギーを発散できず、先生に反発して学級崩壊する事例が目立つ」という。コロナ禍の学校では我慢を強いられる場面が多々ある。行事が縮小され、給食時間は「黙食」、友達と遊ぶときも体を触れ合わせにくい。学校になじめない子や無理して頑張っていた子は、コロナ禍を機に不登校にもなりがちという。

 「最近、私に話し掛けてくる子が多いのも、不安感の表れかもしれません」と菅さん。「コロナ禍は大人にもしんどい。社会や身近な大人の余裕のなさは、子どものストレスにもつながるんです」と語る。

 現場の実感を裏付ける統計もある。大阪府立大などの研究グループが昨年10~11月、小学4年から高校生まで1032人に行った調査。26%が「軽いストレス」、8%が「重いストレス」を抱えていた。保護者の精神状態が悪いほどストレスも重い。

 「親と離れたい子もいるんですよ」と教えてくれたのは、NPO法人ひろしまチャイルドライン子どもステーション(広島市中区)。家で親と接する時間が増えて、あつれきが生じるケースもあるようだ。昨年はそんな電話が相次ぎ、スタッフが児童相談所への連絡を勧めたこともあったという。

急ぐとこじれる
 まだ先が長そうなコロナ禍の中で、子どもがうつ状態になったら、どうしたらいいのだろうか。大竹市の広島西医療センター専門小児科、湊崎和範医師(55)は「多くの子はストレスが強まっていても表に出さない」と指摘する。特に思春期の子は「反抗期だから」と流されやすい。理由もなく物に当たる、無口になる、朝起きられないなどの変化は、心の負荷が高まっているサインかもしれない。

 保護者が異変を感じたら、まず安心感を与えることが必要という。「子のストレスの要因は複合的。親が、学校が悪いという簡単なものではない。不満を口にしたり不登校になったりしても、否定せずに話を聞き、落ち着いて受け止めて」。「聞き置く」ことが大切で、問い詰める態度は控えたい。解決を急ぐとこじれることもある。

 学校でも、担任だけでなく養護教諭やスクールカウンセラーら複数人が様子を気に掛けることで、子どもが心を開く可能性も増すという。周りの子どもたちは最近、沈んでいませんか。

中国新聞社

学校の制服に、性別によって服装を強制されない「ジェンダーレス化」の動きが広がっている。この春から女子制服にスラックスを採用した学校も多いが、男子用のスカートは周囲の視線を気にする意見が根強く、利用例はほとんどないようだ。誰もが気兼ねなく着られる制服とは一体どんなものなのだろうか。兵庫県姫路市の市立山陽中学校では、今年度の新入生からブレザーとスラックスを男女の標準制服とし、希望者はスカートを選べるようにした。スカートにした女子生徒がやや多かったが、スラックスも動きやすさや脚を見せない安心感に優れ、どちらも自然に受け入れられているという。長谷川貴久校長は「学校は社会の縮図。時代や環境の変化を踏まえ、男女分け隔てなく着られる制服を考えた」と話す。
 開発にいち早く手を付けたのは、岡山市の学生服メーカー「トンボ」だ。文部科学省が性同一性障害の生徒らへの配慮や相談体制を充実するよう全国の学校に通知した2015年ごろから、制服のデザイン変更に関する相談が増えたという。特に、女子の体形に合わせたスラックスは、全国で約1000校が採用するヒット作となった。
 一方、男子用スカートは、性的少数者団体から「カミングアウトの強制につながる」「はきたくてもはけない」との意見があり、商品化に至っていない。同社デザイナーの奥野あゆみさんは「男子向けのスカートも個別に注文があれば対応できる。性的少数者を置き去りにせず、憧れも損なわない制服作りを心掛けている」と語った。
 早稲田大の森山至貴准教授(社会学)は「男子用、女子用と制服が押し付けられなくなったことは重要な一歩だが、これがゴールではない」と指摘。「2種類だけの制服を振り分けようとすれば、生徒の生き方を制限することにつながる」と話す。
 その上で、今後、中性的なデザインの制服を加えて選択肢をさらに増やすことを提案。「そうすれば、生徒それぞれが心や体の性別から離れて、自分に合った制服を選べるようになるだろう」と語った。

2021年5月10日日時事ドットコムニュース

5/24(月) 17:03 KSB瀬戸内海放送


新型コロナの感染拡大を受けて、高松市の小学校は22日、無観客で運動会を行いました。会場に来られない保護者に向けては動画を配信しました。

(新番丁小学校/宮井優寿 校長)
「コロナの影響でおうちの人がこのグラウンドを囲って見ることができません」

 高松市教育委員会から5月の運動会を『無観客』にするよう要請されたことを受けて、新番丁小学校は22日、無観客で運動会を開きました。

(記者リポート)
「子どもたちの一生懸命な姿は他の児童や保護者に、映像を通して届けられます」

 一度に運動場に集まる人数を減らそうと、上級生と下級生を前後半に分けて、競技をしていない学年は教室から見守りました。

 運動場には学校とPTAから5台以上のカメラが用意され、各学年による徒競走やダンスを撮影しました。

 練習の成果を目いっぱい披露した児童の姿は、保護者に向けて動画で配信されました。

(参加した3年生の児童は―)

「運動会ができたっていうことはうれしいです。だけど、親が来てくれないのが少し悲しいです」

「練習の時は鈴がよくのいたのにきょうは付いたまましっかりと踊れました。うれしかったです。(親が)家でやってって言っていたので、法被とかも持って帰れるので家でやるつもりです」

(新番丁小学校/宮井優寿 校長)
「運動会ができて、それに向かって一生懸命力を合わせて練習したということは本当に意味のあることですし、映像を通してではあるんですけど、子どもたちの頑張りをしっかりと褒めていただきたい」

KSB瀬戸内海放送

5/24(月) 7:11 沖縄タイムス

 事件を起こした18、19歳の厳罰化を図る改正少年法が成立した。

 少年法の適用年齢は維持しつつ、18、19歳を「特定少年」と位置付け、それより下の年代と区別した。民法の成人年齢が来年4月に18歳に引き下げられるのに合わせた。

 改正法でも、全ての事件を家庭裁判所に送る仕組みは維持される。

 一方で家裁から原則として検察官に送致し、成人同様の刑事手続きを取る犯罪の範囲が拡大される。現行では殺人や傷害致死などに限られるが、強盗や強制性交、放火なども加わる。

 逆送されると検察官が刑事処分を判断することになり、起訴されれば公開の法廷で刑事裁判を受ける。実刑が確定すれば刑務所で服役する。

 ただ、18、19歳は高校生や大学生に相当する年齢である。成長の途上にあり、矯正教育によって更生できる可能性が高い。厳罰化が立ち直りへの妨げにならないか懸念する。慎重に運用すべきだ。

 少年事件の場合、加害者の少年も虐待などの被害者であるケースが少なくない。心理学の専門家らも交じえて生い立ちや事件を起こした背景事情を調べる家裁の役割は、ますます重要になってくる。

 少年院なら立ち直りに向けた教育が受けられるが、逆送されて執行猶予付きの判決になった場合、教育的指導を受けないまま社会に戻ることになる。家裁には一つ一つの事件を丁寧に調べて対応を判断してもらいたい。

■ ■

 改正法では、現在は禁じられている実名や顔写真などの報道も、起訴段階で可能となった。犯罪被害者らからは犯罪の抑止力になる、と歓迎する声がある。

 ただ、起訴されても、裁判所が少年院送致など保護処分がふさわしいと判断し、家裁に再び審理を移すこともあり得る。

 いったん実名が報じられ、インターネットに書き込まれれば消去は困難だ。むしろ更生が厳しくなり再犯につながる恐れさえある。報道する側として私たちは更生に重きを置いた少年法の理念に基づき慎重に対応したい。

 気になる点はまだある。日頃の不良行為から罪を犯す恐れがあると認められた「虞(ぐ)犯(はん)」を家裁送致する制度について、18、19歳を対象から外したことだ。

 家出を繰り返す少女らが事件に巻き込まれるのを防ぐなど、虞犯規定は「セーフティーネット」の機能も果たす。対象から外すのならば新たな支援の枠組みを検討してほしい。

■ ■

 少年事件は減少し、人口比でもピーク時の1981年に比べ2019年は6分の1まで減っている。

 「現在の少年法は有効に機能しており、厳罰化にメリットはない」とする刑事法学者らの声明はもっともだ。

 改正法の付則には、施行から5年後、社会情勢や国民意識の変化を踏まえて、18歳、19歳への措置を改めて検討する規定が設けられている。少年事件をさらに減らすにはどうすべきか、社会に戻った少年をどう支えるか、長期的視点で検討を続けるべきだ。

5月23日 毎日新聞
国が各都道府県・政令市の67自治体に最低1校の設置を目指している公立夜間中学が今年4月時点で48自治体で設置されず、このうち目標年度と設置方針があるのは4自治体にとどまることが毎日新聞などの調べで判明した。国は政令市に設置された場合は所在道府県にも設置されたとみなしており、開設済みは12都府県・7政令市の計36校にとどまる。  義務教育を十分に受けられなかった人たちが学ぶ夜間中学の設置が進まない背景には、入学対象者を把握する難しさや教員確保など財政面の課題がある。  今年2~4月、未設置の道県・政令市の検討状況を調べたところ、目標年度を含めて設置方針があるのは▽札幌市、相模原市、香川県(設置者は三豊市)=いずれも目標年度2022年度▽静岡県=同23年度――の計4自治体のみだった。  未設置の自治体は、その理由としてまず、入学対象者を把握する難しさを挙げた。熊本県教委が各市町村の住民を対象に17年度に実施した調査では、回答者978人のうち「通いたい」は128人いたが、いずれも義務教育を十分に受けた後に高校を卒業するなど入学対象者に該当しなかった。担当者は「本当に必要とする人に情報を届け、ニーズをいかに正確に把握するかが今後の課題」と話す。  岩手県教委は15年度以降、市町村教委などへ設置の意向調査を続けているが、把握できている入学対象者はゼロ。「潜在的な希望者はいるはずだ。広くニーズを吸い上げる必要がある」と調査方法を見直す考えだ。福島県教委や愛媛県教委は希望者が少ないことに加え、県内に分散していることを設置に踏み切れない理由に挙げた。  岡山市教委はニーズを確実に把握することなどを目的に20年度から独自の「夜間教室」を2カ所に開設し、国語・算数(数学)の2教科を中心に月2回、元教員が授業をしている。  このほか、教員の確保や施設整備など財政負担を課題に挙げる自治体もある。人件費は昼間の中学校と同様、国が3分の1、都道府県(政令市)が3分の2を負担する。施設は昼間の生徒が下校した後の校舎を使うケースがほとんどだが、教室を新設したり、トイレをバリアフリー化したりといった大規模改修を行った事例もある。「夜間中学の必要性は理解しているが、ハコ(施設)、ヒト(教員)の問題はある」(山形県教委)▽「ハードルとして挙げるなら教員の育成。外国籍の生徒も多く来ると思うので、専門的なノウハウを持った人を配置する必要がある」(静岡市教委)――との声が出た。  夜間中学を巡っては、設置促進を自治体に求める教育機会確保法が16年12月に成立し、国は補助事業などの支援策を打ち出した。菅義偉首相は21年1月の衆院予算委員会で「今後5年間で全ての都道府県・指定都市(政令市)に少なくとも一つ設置されることを目指す」と国として初めて目標年度を明言した。【千脇康平】  ◇公立夜間中学の設置状況  ※所在地、校数(うち政令市)の順。文部科学省調べ(2021年4月現在)・茨城県……1(-)・埼玉県……1(0)・千葉県……2(0) ・東京都……8(-)・神奈川県……2(2=横浜市、川崎市) ・京都府……1(1=京都市)・大阪府……11(5=大阪市、堺市)・奈良県……3(-)・兵庫県……3(2=神戸市)・広島県……2(2=広島市)・徳島県……1(-)・高知県……1(-)・合計……36(12)

5/23(日) 10:02 47NEWS

春の訪れとともに、新入生、新入社員の姿を目にすることが増えた。新しい環境で、人と目を合わせられない、うまく字が読めない、計算ができない子供たちはいないだろうか。複数のタスクにパニックになったり、他人と接するのが苦痛そうにみえたりする新人社員はいないだろうか。そこには彼らの「わがまま」「怠慢」「努力不足」ではない要因があるかもしれない。「発達障害」を抱える人たちの現状をお伝えしたい。(リスク管理・コミュニケーションコンサルタント=西澤真理子)

 ▽誤解が多い発達障害

 「発達障害」という言葉を聞いたことがあるだろう。この10年ほどの間に、テレビの特集などで注目されるようになってきた。正式な医学用語は「神経発達障害」。出生以前の原因で、生まれつき脳の機能に何らかの偏りがある障害の総称である。

 発達障害の分野における第一人者で医師でもある岩波明昭和大教授によると、症状は主に以下の三つに分類される。得意と不得意の差が大きいことが特徴だ。


 (1)コミュニケーションや対人的な相互関係が困難。特定の者や行動など同一性へのこだわり(自閉症スペクトラム障害、ASD)

 (2)集中できない、じっとしていられない、衝動的な行動をする(注意欠如多動性障害、ADHD)

 (3)読み書き計算などの特定能力の習得や使うことが苦手・困難(限局性学習障害、LD)

 発達障害は子供全体の5%以上、成人でも少なく見積って3%にみられる症状である。明らかな身体障害や精神障害とは違い、軽症の場合には、自分も周りも気付かず、見過ごされてきたケースもある。「サービス産業の比重が高まり、よりコミュニケーションが求められる社会構造となり、発達障害を抱える人たちが顕在化してきた」と岩波教授は話す。

 日本のムラ社会的な「同質傾向」、経済の縮小や匿名のネット化による「不寛容傾向」なども背景にあろう。「空気が読めない(KY)」「コミュ障」など、コミュニケーションを苦手にする人をあざけり、おとしめる差別言葉が象徴だ。

 一見普通に見え、認知されにくい「発達障害」はすぐに分かるものではない。しかし努力で解決できるものではないために、レッテルを貼られ責められることで追い込まれて「抑うつ」や「不安症状」を引き起こすことも珍しくない。

 昨年開催された昭和大学でのトークイベントで、漫画家の沖田×華氏(代表作「透明なゆりかご」)の話を聞く機会があった。沖田氏は、複数の発達障害の症状を抱えながら人気作家として活躍中だ。

 自身の子供時代を振り返り「相手の感情が分からず嫌われるまで付きまとった」「頭が休まないためにおしゃべりで、先生にいじめられた」「算数ができず塾に行っても集中できずにだめだった」と打ち明けた。看護師の資格を取り、病院に勤務するも、仕事も周りとの関係もうまくいかず、自殺を図ったことさえあるという。

 会場の参加者からも「良かれと思いやったことがうまくいかず、なぜ女なのにできないのと指摘されて自信がなくなった」「他人との距離を取ることに苦労している」など、切実な声が寄せられた。

 2017年に筆者が共催したシンポジウム「おとなの発達障害:働き方と職場のコミュニケーション」でも多くの事例を聞いた。自分や家族のこと、優秀だがどうしても協調性を欠いてしまう同僚など、人々がひそかに悩んでいる事実を改めて認識した。遠くから足を運んでくださった一般の参加者も多く、発達障害を抱える家族の切実さ、社会のサポートが限られる中で家族が文字通り駆けずり回って情報を集め、対策を講じなければならない「制度の不備」を実感した。

 日本の現状は、障害のある人との共生が進む北欧諸国と比べると悲しい限りだ。スウェーデンで保育士を務める友人によると、幼児期の段階で親や保育園のスタッフが目配りし、発達障害の症状がある場合にはその子に合わせた教育、そして職業訓練を施し、社会での自立を促していくという。多様性を重んじ、発達障害についてももっとオープンだ。

 ▽必要なのは正確な情報の共有

 今日本に必要なことは、基本的な誤解を解き、治療や社会復帰、就労に向けた取り組みなど、正確な情報を広く周知し共有することだろう。

つまり、発達障害とは、母親の育て方が悪かった結果という根本的に誤った理解ではなく、生まれ持った障害であると正しく認識することだ。

 さらに、正確な情報として、発達障害と他の症状が同時に出現することがあるという事実を知っておくべきだろう。例えば、ADHDとASD、うつ病とADHD、ADHDと依存症などがある。

 治療としては、発達障害の症状を軽減するための薬物治療法、認知行動療法の専門プログラムがあることを知っておいてほしい。例としては昭和大学付属烏山病院のサポートプログラムがある。また、就労サポート団体も増えてきている。株式会社「Kaien」などは活発な支援を行っている。

 ▽社会は多様性により育まれる

 最も注意すべきはあいまいな情報だ。インターネットには玉石混合の情報があり、医療機関を受診しても、その医師が必ずしも専門家ではない場合もある。素人判断は禁物。誤った情報に振り回されないためには信頼性の高い情報にアクセスすることだ。

 発達障害の患者を診察している医師が書いた一般向けの書籍もある。例えば岩波教授の「発達障害」(文春新書)や「発達障害はなぜ誤診されるのか」(新潮選書)、「女子の発達障害」(青春出版社)などだ。もっと専門的に知りたければ、2020年に発足した「日本成人期発達障害臨床医学会」にアクセスすることをおすすめする。これらの情報を基に、頼れる医療機関や支援団体に出会うことができるだろう。

 メディアの発信も重要だ。ニトリ創業者で現在会長である似鳥昭雄氏は、数年前にたまたまテレビを見ていて、自身が「発達障害」ではないかと考えたそうだ。小学校高学年になっても自分の名前を漢字で書けず、先生の話が理解できず悩んでいたという。

 現在は、発達障害などで学校に行けなくなった子供たちをサポートするために東京大学の研究室が始めた「異才発掘プロジェクト」を、彼らに自信を付けさせ、夢と希望を与えたいと、似鳥氏自身が参加し支援している。

発達障害のある人たちは確かに社会の少数派で、多数派という意味での「普通」ではない。だが生物やコミュニティー、社会の健全さ、活力、新しいアイデアは多様性により育まれる。少しもはみ出さない、誰もが「普通」で「同じ」である社会は望まれているのだろうか。筆者は英国とドイツで長く暮らしたが、日本で「ちょっと変わってる」と呼ばれる人たちは、かの地では「普通」の人に思えるし、その人の個性でもあると受け入れられる。

 あなたの周りにいる「みんなとちょっと違う人たち」を理解し、認め、もし困っているようならばサポートをこころみてはどうだろう。少数派をはじくのではなく、社会で支援し共生していくことが何よりも大切だ。

 日本でも、さかんに言われるようになってきた「ダイバーシティ」とは本来、こうしたことである。

5/22(土) 19:31 東洋経済

登校に抵抗のある子に対する問題解決の手段として「休む」ことを提案しているのが、精神科医として日々多くの子どもに接している井上祐紀氏です。では、休んでいる間、親は子に対してどのように向き合っていけばよいのでしょうか。その方法について、新著『学校では教えてくれない自分を休ませる方法』を上梓した井上氏が解説します。

前回:登校が辛い子の親に教えたい「休む」という選択

■「休む」とは「休息をとってリフレッシュすること」

 「休む」という言葉から、あなたはどんな印象を受けるだろうか。学校を休む、部活を休む……。「休む」には、「するべきことをしていない」といったネガティブなイメージがつきまとっていることも多い。

 しかし本来の「休む」とは、休息をとってリフレッシュすること。誰にとっても絶対に必要なことであり、子どもの場合は、何らかの事情から自分を休ませるために「学校に行かない」という選択をすることもある。私はこうした場合の欠席を、「不登校」ではなく「自主休校」と言い表すのがよいと考えている。

 子どもが焦りや後ろめたさを感じずに休むためには、「堂々と休めること」が重要である。そのために欠かせないのが、親のリード。特に長期欠席をする場合、「本当は行くべきなのに休んでいる」のではなく、「学校に行かないのが普通」という雰囲気づくりが必要だ。

 しばらく学校を休むと決めた場合、私は親子で「自主休校式」をすることを勧めている。目的は、休んでいる間の「生活の決まりごと」を家族で共有すること。ただしここでいう「決まりごと」は、親が決めて子どもに守らせる、というものではない。

 自主休校式の最初のステップは、今の状態を正しく知ること。それによって「休むこと」の目的と手段がかわってくるからだ。まずは子どもが、次に解説する4つの段階のどこに当てはまるのかを見極めてほしい。

 今の状態がわかったら、その段階の目的と手段、それに合う「行動の提案リスト」を書き出す。このリストは、子どもが自分でつくるのが理想である。できあがったものを家族が見られる場所に貼れば、休校式は終了。

 このリストは、決して「しなければならないこと」ではない。子どもにとっては、何をしようかな? と思ったときのヒントにするためのもの。親にとっては、「子どもの状態に合った期待」を確認するためのものである。

 第1段階から第4段階までは、階段を1段ずつ上るように進んでいくもの。子どもの「今」に合う生活をすることが、ステップアップにつながる。

■自宅では十分に休めないこともある

①身の回りの安全を確保する段階
 本人のつらさが最も大きい段階。いじめや暴力の被害など、深刻な問題が背景にある場合が多く見られる。

 こうした場合、「学校に行くのを避けざるをえない」と感じさせる問題が解決するまでは、登校する必要はない。いじめられたり暴力をふるわれたりする環境は、安全とはいえないからだ。第1段階では、子ども自身が「自分は安全だ」と感じられるようになることが学校を休む目的である。

 この段階できちんと判断したいのが、子どもが安全をおびやかされると感じているのが、学校だけなのか? ということ。学校だけに問題があるなら、自宅が安全な場所にある。しかし、家族のだれかとぶつかり合うことが多いような場合、自宅では十分に休めないこともあるのだ。

 そういった場合は子どもと話し合い、本人が安全を感じられる場所(図書館などの公共の場所や親類の家など)で過ごせる時間をつくる工夫が必要である。

 家族との関係に問題を抱えている場合、解決法を見つけにくいこともある。そんなときは親子で抱え込まず、自治体の子育て支援窓口や児童相談所などを利用して、第三者にアドバイスを求めることを試してほしい。

②睡眠や食事のバランスをとる段階
 安全は守られているけれど、食事や睡眠が学校生活に影響を及ぼすほど乱れてしまっている段階。いきなり規則正しい生活を押しつけるのではなく、まずはきちんと食べることや、眠る時間と起きている時間を分けることが目的になる。体調を整え、健康をとり戻すことを最優先しよう。

 この段階にいる子は、「何もできそうにない」という気持ちになってしまっている。好きだったはずの趣味などでさえ、楽しめなくなっていることがほとんど。

勉強や手伝いなどは求めず、「毎日お風呂に入る」「気が向いたら近所を散歩する」など、日常的なことができるようになることを目指そう。本人が焦って勉強などを始めようとしたら、親が止めるぐらいでいい。

 食事に問題がある場合、本人の希望を聞いて食事の時間を決める。時間になったら、おなかがすいていなくても食卓につくことを習慣にする。

 睡眠が乱れているときは、まず昼夜逆転でもいいので、本人が決めた時刻に寝て起きるリズムを作る。リズムができてきたら、少しずつ時間をずらし、通常の生活リズムに近づけていくといいだろう。

■好きなことをさせて活発さを取り戻す

③好きなことならできる段階
 食事や睡眠など基本的な生活リズムは整っており、趣味の活動などであればやってみようかな、と思える段階。第3段階の目的は、自分の好きなことをして、「おもしろいことをおもしろいと思える」ようになること。

 この時期にとり入れる活動は、子ども自身が好きなことならなんでも構わない。もともと好きだったことでもいいし、興味を覚えた新しいことを始めてみてもいい。マンガを読む、ゲームをする、スポーツをする……。大切なのは、本人が心から「楽しい」「おもしろい」と思えることだ。

 注意したいのは、食事や睡眠のリズムを乱さないこと。ゲームが好きならゲームを楽しむのはOK。ただ、夢中になりすぎて食事を抜いたり、睡眠時間を削ったりしないよう注意は必要だ。

 大人には、学校を休んで好きなことだけしているのは単なるわがままのように見えてしまうかもしれない。でも、勉強をさせようとするのはまだ早い。学校に行けないほど追いつめられている状態から抜け出すためには、「楽しめるようになる」段階が絶対に必要。今、目指すべきなのは、好きなことをして心地よさを感じ、活発さをとり戻すことなのだ。

④未来に向かって動き始める段階
 自分の好きなことを楽しみながら、未来にも目を向けられるようになる段階。自分はこれからどうしたいのか、そのために何をするべきかを考え、少しずつ実行に移していくことが第4段階の目的だ。

 学校を休んでいた場合、親は「以前と同じように登校すること」を最終目標にしがちです。でも子どもは、学校に戻りたいと思っているとは限らない。学校より先に塾に戻りたい、学校ではなくフリースクールに通いたい……。自分の未来について子どもの出す答えが、「学校に戻ること」以外のものである可能性も想定しておこう。

■頭ごなしに反対するのは逆効果

 子どもの希望の中には、「学校をやめて俳優になる!」のような、やや突拍子もなく、親として応援しかねるものもあるかもしれない。

 そんな場合も頭ごなしに反対するのは逆効果。「学校には行かなくちゃダメ!」では親の期待を押しつけられているようで、子どもは疎ましく思うはずだ。

 でも、「やりたいことが実現できるよう応援したい。そのために今の学校生活のデメリットとメリットの両方について考えてみない?」というアドバイスだったら、親が自分の気持ちを尊重してくれたことを感じとり、耳を傾けたくなるかもしれない。

 まずは今の子どもがどういう段階にいるかを見極め、その子に合った目標設定をする。目標が完全にできるようになったら次のステップへ。あせらず、1段ずつ上っていくことが重要だ。

 自主休校式を経た親子のかかわりが、これまでよりも少しだけ快適になることを願っている。

井上 祐紀 :精神科医(子どものこころ専門医)

次のページ
RSS