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消えた記事、抗議で復活②

ガーディアン、英BBC、英紙デーリー・メールは7月、共同で「グーグルはEU司法裁判所の判断をあまりにも早急に実行に移しすぎだ」と抗議した。ガーディアンによると、グーグル関係者は、EU司法裁判決の履行に苦闘するなかで、産みの苦しみを味わっているのかもしれない、と認めたという。
欧州メディアからは「グーグルによる検閲」「グーグルは勝手に削除する前に、報道機関側と協議すべきだ」「どの個人情報を削除し、どれを削除しないかの判断は困難」とさまざまな指摘が出た。数多く取り上げられたことで、マクドナルド氏の名前が逆にメディア上で拡散し、「思い出される」結果にもなった。
ガーディアンによるとその後、消えた6件の記事のうち、4件の記事が検索結果に復活した。マクドナルド氏の名前で検索すると、10月現在で同氏の記事も検索結果に現れる。
東京大の宍戸常寿教授(憲法学)は、「報道機関は知る権利と、プライバシー侵害の度合いを比較して判断できるが、そうした能力のないグーグルが削除する場合には、別の基準や手続きが必要。それなしにグーグルに削除の判断を丸投げするのは酷だし、危険だ」と話す。
ネット利用者の知る権利をどう確保するか、という問題もある。グーグルのデビッド・ドラモンド上級副社長は欧州紙への寄稿で、「(検索結果の削除がどんどん進めば)図書館の中に本はあるのに、本の存在は図書館の索引カードには出てこないような感じ」になりかねないと訴えた。
索引カードはほぼ全ての本を網羅しているから価値がある。これまでの判例でも、多くの人々がアクセスする検索エンジンは「公共財」としての性格を持っていると認定されているが、それがスカスカの検索結果しか出さないとなると、ネットを通した人々の知る権利が大きく損なわれる恐れも指摘されている。 
2014年11月16日 朝日新聞(榊原謙)

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