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「できないからやらない」と言い放つ子の背景…親の何気ない態度に深く「傷ついていた」

6/2(水) 12:01 幻冬舎ゴールドオンライン

わが子が幸せになるためには、自立と自律を兼ね備えることが大事……幼稚園の園長として1万組の親子を見てきた、学校法人山崎学園の理事長・山﨑拓史氏の教育論を紹介します。

わが子の「悪口」は親の影響…家庭内では褒め合いを
父親が母親の、母親が父親の悪口を子どもの前で言うのもやめましょう。二人ともが、子どもにとっては大切な親なのですから、お互いに褒め合って、「僕の(私の)両親はすばらしい人たちだ」と思ってもらいましょう。

家族が信頼し合い家庭内が落ち着いていると、子どもの心には安心感が生まれ、他のことに興味関心を積極的に持つことができます。しかし、家族がぎすぎすしていると、そのことにばかり気を取られ、ほかのことに集中できなくなります。

それに、子どもは親から道徳観を学びます。親が悪口を言っていれば、子どもも真似をするのは当然で、園や学校でも無意識のうちに誰かの悪口や不満ばかりを言うようになっていきます。悪口を言う人は、悪口を言う人と仲良くなります。

共通の敵をつくると、人は強い結びつきを感じてしまうからです。しかし、悪口を言わない人は、その場にいるのがいたたまれず、いつか去っていきます。つまり、悪口を言う人だけしか、周囲にいなくなってしまうのです。

人間関係の幅が狭くなることは、将来の仕事においてもデメリットでしかありません。悪口を言っていたことを知られれば、社会的信用を失う原因にもなります。

もし、親が悪口を言っていないのに、子どもが友達や先生の悪口を言うようになったとしたら、子どもの周りに悪口を言う子がいるはずです。だからといって、その子をつるし上げれば、結局は同じ穴のむじな。ここは冷静に、わが子を正しい方向へ誘導していきましょう。

子どもが誰かの悪口を言ったら、その言葉を自分が言われたらどう感じるかを気づかせなければなりません。方法としては、親がそのままオウム返しで子どもに言ってみるのも良いのですが、鏡の前で、子ども自身に言わせてみるのも手です。

鏡の中の自分に悪口を言わせて「どんな気持ち?」と聞いてみてください。就学前の子の悪口には、たいてい、「バカ」「キモイ」といった単語が含まれていますから、嫌な気分を味わうはずです。

「ママは、その言葉を聞いて悲しい気持ちになったよ。お友達とは、楽しいお話をしてほしいな」と親の気持ちを伝えます。そして、今まで以上に、家庭内では良い言葉、プラス思考の言葉を大人が使い、悪口は封印してください。

1カ月ほど様子を見ても、悪口がおさまらないようなら担任の先生に相談をしてみましょう。クラスの中にいじめの構図ができているかもしれません。クラス全体の問題として調査や解決は先生にゆだね、わが家はわが家のやり方で、人の気持ちを傷つけない話し方を継続していきましょう。

「できないからやらない」原因は親の…

新しいことを始めるときに「できないからやらない」「失敗したら嫌だからやらない」と言う子がいます。こういった子たちは、失敗や負けによってひどく傷ついたケースが多い傾向にあります。

「だから失敗するって言ったでしょ」「まったく不器用なんだから」などと親に否定された、不幸な経験を持っているのです。すぐに「失敗」は恥ずかしいことではない、むしろ、頑張った証であることを教えてあげる必要があります。

最も効果的な方法の一つがお手伝い。今の子どものスキルより、ほんの少し難度の高いお手伝いをさせましょう。

2歳であれば、食事前のテーブルセッティング、3歳であれば簡単な洗濯物畳みや野菜をちぎるなど。4歳以降は包丁を使う、洗濯物を洗濯ばさみで留める、食器を片づけるといった巧緻性や慎重さが求められるお手伝いにチャレンジさせます。

最初はうまくできないかもしれませんが、できるだけ一人でやらせてあげましょう。失敗しても見映えが悪くても、笑ったり責めたりせず「助かったよ。ありがとう」と感謝するのが基本です。

子どものほうから「うまくできない」「失敗だね」などネガティブな発言があった場合には、「お手伝いには成功も失敗もないよ。ママが助かったから、それだけでOK!」と肯定してあげてください。また、親が失敗するところを見せてあげるのも大切です。

わざと失敗する必要はないのですが、少し苦手なことにチャレンジしてみると、失敗シーンを見せてあげられるかもしれません。

例えば、ママがDIYに挑戦したら、木材の大きさがそろわず、いびつな箱が完成した。日曜日の朝ごはんづくりをパパが担当したら、目玉焼きを大失敗。でも、お互い、失敗したときも笑顔で「頑張ったね!」と称え合う。そして得意な人にやり方を聞いて、また、翌日や翌週に挑戦してみるのです。

そんなふうに、親も失敗するけれど、ちっとも恥ずかしくないし、ちゃんとやり方を調べて、何度も練習すれば成功につながることを示してあげましょう[図表1]。

子どもの頭の中で、親はなんでもできる完璧な存在としてインプットされています。それを壊して、誰だって失敗すると分かれば、子どもの気持ちもラクになるのです。

「できたね」はNGワード…実行力を上げる言葉とは

わが子の実行力を高めたいと望むなら、まず親が変わること。その最も簡単で、効果的なのが、声掛けの言葉にあります。

今まで何気なく使っていた言葉が、子どもを不安にさせたり、イライラさせたり、自信を奪ったりしていたかもしれません。ネガティブからポジティブへ、プレッシャーからやる気へと気持ちを変えてくれる言葉、その例をいくつか挙げておきます。

これが正解ではありません。各家庭で使いやすいアレンジや、新たな変換ワードをつくって活用していきましょう。

山﨑 拓史

学校法人山崎学園理事長

山﨑 拓史

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