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ネットいじめで追い詰められ

 2017年4月24日(月曜日) 朝日新聞
(小さないのち)大切な君:4 ネットいじめで追い詰められ

15年ほど前からネット上でのいじめの相談に乗る全国webカウンセリング協議会(東京都港区)の安川雅史理事長(51)に2015年、ある母親から電話が入った。中学1年の娘が自殺を図り、救急車で運ばれたが意識がないという。
 後日、安川さんが母親から話を聞くと、関東の中高一貫の私立校に入って間もない娘から「スマホがないといじめられる」と頼まれて買い与え、クラスの女子20人全員がLINE(ライン)のグループでやり取りするようになったという。
 その後、女子生徒がメッセージを送っても無視される「既読スルー」が始まった。昼ご飯は1人。休み時間はトイレにこもるように。ある日、上履きのまま泣いて帰宅し、自殺を図った。経緯を語りながら、母親はおえつを漏らした。
 このクラスの別の女子生徒の母親から偶然、安川さんに相談が寄せられた。生徒は「いじめを傍観してしまった」と悔やみ、不登校気味になっていた。母親に話を聞いた。
 自殺を図った女子生徒以外の19人でLINEの「裏グループ」をつくり、女子生徒を隠し撮りした写真や「キモい」などのメッセージを送り合っていた。生徒の1人が「裏グループ」の画面を面白半分で本人に見せたその日に、自殺を図ったとみられている。
 母親の隣でじっとうつむく生徒に、安川さんは語りかけた。「もう繰り返さないと思い続けて。もし今後、同じようなことが起きたとき、あなたにしかできないことがあるんだよ」
 安川さんのもとには毎年約1万5千件の相談が来る。「『○○を殺す会』と名付けたサイトを作られた」「名前を検索すると、顔にバカと書かれた自分の画像が出てくる」など、心を深く傷つけるものが少なくない。
 子どもたちは、匿名で書かれた悪意のツイートを繰り返し見たり、誰が書いたのかと疑心暗鬼になったりして追い詰められるという。たとえ引っ越しても自分を傷つける言葉や画像がネット上から消えるわけではなく、逃げ場がないのがネットいじめの特徴だ。
 気が休まる時間がなく、子どもの表情がこわばるなどの異変も出るため、安川さんは家庭でSOSに気づいてほしいと訴える。

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