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長引くコロナ禍、中学の息子うつ状態に 学校で我慢、不安感募る

5/25(火) 10:20 中国新聞デジタル

新型コロナウイルスの流行が長引く中、中学生の息子がうつ状態に陥り、学校に行けなくなった―。無料通信アプリLINE(ライン)に、広島県内の40代の女性から声が届いた。こんなとき、どうしたらいいのか。ほかの子どもたちの心にも異変があるのか。現場を訪ねた。

 「思春期だからかと思ったら、うつと言われ、驚いた」と女性は言う。息子は中学1年だった昨年12月、腹痛を訴えて学校を休んだ。回復後も欠席を繰り返し、学年末から不登校に。家ではイライラして家具に当たり、ふさぎ込んで部屋にこもった。一人になることを怖がるときもあった。

 小学校までマイペースで元気だったことを思うと、中学の新たな環境がストレスだったのかもしれない。課題の量も多く、担任との折り合いも悪かった。「それに、コロナ禍が加わった」と女性。長期休校は、学校に慣れるのを難しくした。楽しみだった県外の親戚宅への旅行も中止が続いた。「息抜きもできず、しんどさが増したのかもしれない」と振り返り、「ほかの子どもたちのことも心配になっています」

大人もしんどい
 そんな女性の懸念を、広島市内の小中でスクールカウンセラーを務める県公認心理師協会の菅武史理事(51)にぶつけた。すると「元気な子がエネルギーを発散できず、先生に反発して学級崩壊する事例が目立つ」という。コロナ禍の学校では我慢を強いられる場面が多々ある。行事が縮小され、給食時間は「黙食」、友達と遊ぶときも体を触れ合わせにくい。学校になじめない子や無理して頑張っていた子は、コロナ禍を機に不登校にもなりがちという。

 「最近、私に話し掛けてくる子が多いのも、不安感の表れかもしれません」と菅さん。「コロナ禍は大人にもしんどい。社会や身近な大人の余裕のなさは、子どものストレスにもつながるんです」と語る。

 現場の実感を裏付ける統計もある。大阪府立大などの研究グループが昨年10~11月、小学4年から高校生まで1032人に行った調査。26%が「軽いストレス」、8%が「重いストレス」を抱えていた。保護者の精神状態が悪いほどストレスも重い。

 「親と離れたい子もいるんですよ」と教えてくれたのは、NPO法人ひろしまチャイルドライン子どもステーション(広島市中区)。家で親と接する時間が増えて、あつれきが生じるケースもあるようだ。昨年はそんな電話が相次ぎ、スタッフが児童相談所への連絡を勧めたこともあったという。

急ぐとこじれる
 まだ先が長そうなコロナ禍の中で、子どもがうつ状態になったら、どうしたらいいのだろうか。大竹市の広島西医療センター専門小児科、湊崎和範医師(55)は「多くの子はストレスが強まっていても表に出さない」と指摘する。特に思春期の子は「反抗期だから」と流されやすい。理由もなく物に当たる、無口になる、朝起きられないなどの変化は、心の負荷が高まっているサインかもしれない。

 保護者が異変を感じたら、まず安心感を与えることが必要という。「子のストレスの要因は複合的。親が、学校が悪いという簡単なものではない。不満を口にしたり不登校になったりしても、否定せずに話を聞き、落ち着いて受け止めて」。「聞き置く」ことが大切で、問い詰める態度は控えたい。解決を急ぐとこじれることもある。

 学校でも、担任だけでなく養護教諭やスクールカウンセラーら複数人が様子を気に掛けることで、子どもが心を開く可能性も増すという。周りの子どもたちは最近、沈んでいませんか。

中国新聞社

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