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退学も…「朝起きられない」10代に多い起立性調節障害、コロナで拍車

朝起きられず、めまいや腹痛で学校に行けなくなった-。本紙「あなたの特命取材班」に、昨年のコロナ禍による長期休校明けに体調を崩し、退学を余儀なくされた高校1年の女性(16)の家族から声が届いた。診断は「起立性調節障害(OD)」。自律神経の不調が原因で10代に多く、長引く自粛生活によって発症する子どもが増えているという。だが「怠けている」などと誤解され、支援を受けられないケースもある。

 女性は昨春、第1志望だった福岡県内の公立高に入学した。コロナ禍で入学式もなく、約2カ月間は家にこもって学校が出した課題プリントで自学。緊急事態宣言解除後の6月、ようやく登校できた。

 最初は元気に通学していた。1カ月余りして異変が現れた。朝、目は覚めるのに、めまいがして起き上がれない。なんとか家を出ても最寄り駅でおなかが痛くなり、動けない。毎朝「学校に行きたいのに行けない」と泣いた。ところが午後には体調が回復する。

身を切られる思いで退学
 友人関係は良好。原因が思い当たらず、母親は「『甘えているだけ』と思って学校へ行きなさいと叱っていた」。早退したり、保健室で休んだりしながらどうにか通学していたが症状は悪化。校舎に入るだけで顔色が真っ青になった。9月半ばから不登校に。10月、ODと診断された。医師は「環境が変わって息切れしたんでしょう」と言った。

 女性は学校生活に強いストレスを感じていた。休校の遅れを取り戻すため授業は詰め込みで進度も速い。夜中まで必死に予習しても、答えを間違えれば教師に叱られ、立たされる。楽しみだったバスケットボール部の活動も、感染対策のため練習時間が制限され、試合もできない-。

 母親は学校側に診断を伝え、授業のオンライン化など娘が出席できるよう配慮を求めたが、「準備が整っていない」と断られた。今年1月、「出席日数が足りない」として留年か退学か選ぶよう告げられた。親子で話し合い、身を切られる思いで退学届を出した。

コロナ禍で症状を訴える子はさらに増加
 ODは自律神経の働きが崩れ、体を起こしたり立ったりする時に脳などの血流が低下して発症する。小学校高学年から高校生に多く、中学生の1割に見られる。そこにコロナ禍が加わり、症状を訴える子どもはさらに増えているという。

 大阪医大病院小児科の吉田誠司医師によると、もともとの体質にストレス、運動習慣の変化、天候などが影響して起きる。「長期休校と外出自粛により日中の活動量が減ったり生活のリズムが乱れたりしたことに加え、ODの症状が悪化しやすい梅雨や夏の時季に休校明けが重なった」

 治療によって症状は改善できる。生活習慣を正し、散歩など適度な運動を心掛ける▽水分を多めに取る▽投薬で血圧を上げる-などだ。ただ一番大切なのは周囲の理解という。「学校の先生や友人、家族が病気を知っていれば本人への声掛けなど対応は変わる。不安を取り除くことが大事だ」

 学校現場の理解を深めようとする動きもある。岡山県教育委員会は2019年、県医師会と協力してガイドラインを作成。症状の改善に学校が果たす役割は大きいとして、教職員にODの子どもへの配慮を促す。

 高校を退学した女性の母親は訴える。「今は平時ではなくコロナ禍。適応できない子もいる。学校は過度なプレッシャーを与えず、個々に応じた配慮をしてほしい」

 (本田彩子)

西日本新聞

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