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児童虐待事件、過去最多の2133件 死亡も最多61人

警察が昨年1年間に摘発した児童虐待事件は2133件(前年比8・2%増)あり、被害にあった18歳未満の子どもは2172人(前年比9・1%増)だった。いずれも5年間で倍増し、過去最多。死亡した子どもは、前年より7人多い61人に上った。警察庁が11日発表した。

 警察から児童相談所への通告人数も増加傾向が続く。コロナ禍で在宅時間が長くなった影響で、虐待が潜在化しているおそれも指摘されており、警察庁は「情報の把握にいっそう努める」としている。

 摘発した事件の内訳は、暴行や傷害などの「身体的虐待」が1756件と約8割を占め、強制わいせつや強制性交等などの「性的虐待」が299件、凶器を持って脅す行為などの「心理的虐待」が46件、保護責任者遺棄などの「育児放棄(ネグレクト)」が32件だった。

 被害にあった子どもは男児が1139人、女児が1033人。子どもと加害者の関係では、実父(995人)、実母(588人)、養父・継父(300人)、母の内縁の男(210人)の順に多かった。

 亡くなった61人のうち、「無理心中」が21人、「出産直後に死亡」が11人。そのほかの29人は、身体的虐待が23人、ネグレクトが6人で、それらを罪種別にみると、殺人14人、傷害致死8人、保護責任者遺棄致死5人、重過失致死2人だった。

 一方、昨年、警察が虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告したのは10万6991人(前年比8・9%増)で、これも過去最多だった。月別では、コロナ禍で多くの学校が休校していた3月が前年より2割超増え、4~6月も伸び率が10%台に達した。年間でみた増加率は、ともに20%台だった2018年、19年より小さかった。

 警察は通告とは別に、現場で虐待が認められない場合でも情報を児相と共有している。こうした情報提供は4万3577件だった。

 また、子どもの安全確認などで児相が警察に援助要請したのは401件。夜間などに警察が一時保護した子どもは5526人に上った。

コロナの影響、現場は警戒
 昨年1年間に警察が摘発した児童虐待事件は2千件を超え、過去最多だった。子育て家庭を支援する専門家らは、コロナ禍の外出自粛の影響で虐待が潜在化したり、引き金になったりする恐れを懸念する。

 東京都北児童相談所の横森幸子所長によると、コロナ禍が原因で児童虐待が増えたというデータはないが、1回目の緊急事態宣言後の昨年6月は通告が増えた印象を受けた。学校などが再開して虐待に気づく機会が増えたのかもしれないという。

 コロナ絡みで寄せられた通告は、休校中に子どもが勉強せずにゲームをしていたのでたたいた▽子どもの前で、在宅勤務をしている夫婦が激しいけんかをした▽外で遊んでいた子どもが帰ってきて除菌をしないので過度に叱責(しっせき)した――など。

 長引くコロナ禍での対応について「支援が必要な子育て家庭を孤立させないために、関係機関と協力し、状況把握に努める」という。

 NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事で、子育てアドバイザーの高祖常子さんは、外出自粛で助けが求めにくいうえ、周囲も異変に気づきにくい環境になっていると指摘する。親たちが気軽に立ち寄れる場所も減り、「みんな我慢してきたが、気力を失ってネグレクトにつながってしまわないか心配」と話す。

 元児相職員で家族問題カウンセラーの山脇由貴子さんの元には、コロナ禍で母親らからの相談が増えた。子どもや夫らと一緒の時間が長くなり、イライラが抑えられず、手をあげたり怒鳴ったりするケースが相次ぐ。家計が悪化し、子どもに当たってしまう例もあった。山脇さんは「ストレスや怒りは、弱い子どもに向いてしまう」と話す。

 今年に入って2回目の緊急事態宣言が出るなど、コロナ禍での生活は今後も続く。山脇さんは「気分が落ち込む場合は専門家に相談してほしい」と言う。「育児に疲れたら手を抜いて。トランプでも何でもいいので、子どもと一緒に楽しいと思える時間をつくってほしい」とアドバイスする。

 虐待が疑われる場合などは児相虐待対応ダイヤル(189)、子育て相談などは児相相談専用ダイヤル(0570・783・189)へ。(田内康介)

朝日新聞デジタル

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