本日 12 人 - 昨日 450 人 - 累計 908024 人

「生きとっても、苦しい」 いじめ、自殺図った中1の娘

熊本県荒尾市立の中学校に通っていた1年生の女子生徒がいじめを受け、転校を余儀なくされたとして、市教育委員会は1月、いじめ防止対策推進法に定める重大事態にあたると認定した。

 市教委によると、遅くとも昨年8月ごろには女子生徒や保護者から学校側に相談があった。名前を書かない形で中傷するSNSの書き込みや、校内ですれ違いざまにぶつかるといった行為があったという。

 市教委は転校はいじめが原因だったとして重大事態と認定。今月、女子生徒は転校した。

 医師や弁護士ら第三者でつくる「いじめ防止対策審議会」で、事実確認や原因究明のための調査が近く始まる。

     ◇

 「本人は、なぜ自分が転校しなければならなかったのか、納得できない。私もそうです」。女子生徒の母親は振り返る。

 母親によると、これまでに女子生徒は2度自殺を図った。「このまま終わりにしてはいけない」と話す。

 昨年5月、娘はささいなことをきっかけに、同じ学年の生徒から暴言を言われた。

 悩みながらも気にしないようにしていたが、夏には根も葉もないうわさが流れるようになった。

「死なせてよ」
 複数の生徒から、廊下でぶつかられたり、「近づくな」「キモい」などと言われたりするように。

 8月下旬には、SNS上に、名前は書かれていないものの、娘のことを書いたと見られる中傷の投稿があることがわかった。

 9月、加害生徒や担任も交え話し合う機会が設けられたが、いじめは続いた。

 10月には通学用の自転車のベルを壊された。

 ロッカーに入れていた体操服が別の所から出てきたこともあった。

 自宅の同じ部屋で寝ていた娘はハンガーで首をつろうとした。

 すぐに取り上げると、「何で止めると。死なせてよ」と泣かれた。

 その後も、成績を落としたくないと、登校は続けた。

 12月、母親は娘の様子を見守るため、仕事を辞めた。

 同下旬、娘はSNS上に、「人をいじめている、傷つけていることを自覚して欲しい」などと投稿。その数日後、再び自殺を図った。

 夜、足音に気付くと、娘は2階の自室に向かっていた。

 追いかけて部屋に入ると、ベランダの手すりに足をかけていた。もみ合いになりながら、止めた。

 「生きとっても、苦しい」。2人ともパニックになっていた。

 冬休み明けの1月、娘は1日だけ登校した。「学校くんなよ」「死ね」と言われた。限界だった。

 「いじめをしている、人の命に関わることだという認識をしてほしい」。自身は仕事を辞め、娘は転校した。飛び降りようとした部屋には、2人とも入らないようになった。

 母親は「先生たちが最初に対応していれば、こんなことにならなかったとも思います。加害者やその家族にも話を聞き、しっかり指導して欲しい」と訴えた。(渡辺七海)

朝日新聞デジタル

RSS