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不登校YouTuber「ゆたぼん」が批判される本当の理由を東大卒ママがずばり

5月16日 AERA dot.  杉山奈津子(すぎやま・なつこ)
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【写真】ゆたぼん不登校問題に持論を語り称賛を集めたのはこの人

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 小学校へ行かない姿勢を貫いていた「少年革命家」を名乗るYouTuberのゆたぼんが、中学校入学となるこの4月、「中学生になっても学校へ行かない」と宣言しました。

 それを受けて実業家の「ひろゆき」こと西村博之氏とゆたぼんの父親がツイッター上で議論を繰り広げ、波紋は大きく広がり、幾人もの人が「ゆたぼん」について言及しました。
 
 私は、学校へ行く行かないに関しては、今の時代、いいか悪いか白黒つけることではないと思っています。

 なかなか学校へ行けない子のなかには、学校へ行かなくても堂々としているゆたぼんの姿に、救われる人もいるのではないでしょうか。

■私も、どちらかというと学校に行かない子だった

 私もどちらかと言うと、学校へ行くのが嫌で、休んだり保健室にいたりしていた生徒だったので、立場としては、ゆたぼんに近いでしょう。
 
 それでは、私がゆたぼんを支持しているのかというと、それはまた別の話になってきます。

 多くの人が、「学校へ行く行かないの是非」ではなく、「ゆたぼんというYouTuber」に対して目を向けてしまっていないでしょうか。

 さまざまな人のネット上の意見を読むと、この点が混同されがちだと感じます。一般的な不登校うんぬんの話とゆたぼんに関することは切り離して議論すべきことかと思います。
 
 彼が、もし不登校と真摯に向き合い問題提起しているのなら、それはとても素晴らしいことだと思います。ただ、ゆたぼん及びその親は、学校へ行かないことをYouTubeにアップし広告収入を得たり、学校に通っている子たちを「ロボットみたい」と見下すような発言をしたりしています。

 その立ち位置から学校の一般的な不登校問題について議論するのは、少し難しいのではないでしょうか。

■かの発明家エジソンも小学校に行ってなかった!

 不登校といえば、かの発明家のエジソンが小学校を入学3カ月で退学した話が有名です。

 そこでエジソンの母親は、「この子には私が勉強を教える」と宣言し、地下室をエジソン専用の実験・勉強部屋にしました。そして、彼が投げかけるさまざまな疑問に向き合ったのです。

 エジソンは、授業中に教師の教えることの一つひとつに、「なぜ」「どうして」と質問攻めにしていたといいます。教師やそのほかのクラスメートからしたら、エジソンによってうまく授業が進められないわけですから、強い言葉でいえば授業を「妨害された」と感じていたことでしょう。

 エジソンにしても、教師から疑問に答えてもらえずに、不完全燃焼を起こしていたのです。

 ですから、母親の理解のもとでエジソンが学校という集団授業から離れて、独自の勉強ができたことは、エジソンと教師やそのほかのクラスメート、お互いにとって良い結果になったのではないかと思います。

 さかなクンも自伝の中で、小学生時代はランドセルに魚図鑑を入れていたので教科書は持っていかず、授業を聞かずに魚の絵を描いたり図鑑を見たりしていた、と告白しています。

 不登校とは少し違いますが、学校の授業を重要視しなかったという意味では似ている点があります。そしてやはり母親が、彼のやりたいことを伸ばしていったようです。

■自分たちの教育に自信があるのなら、真正面から答えるべき

 私も、中学3年生あたりから、かなりの頻度で学校に行かなくなり、遅刻や早退をしたり、保健室で過ごしたりしていました。私の友人の中には、高校の授業が合わないと感じ、退学までした子がいます。それでも彼女は、大検をとって東大に合格し、その後、自分の好きな研究をしています。

 生まれもった性質により集団行動が苦手だったり、じっとしていられなかったり、ほかにもセンシティブな理由で、不登校になる生徒は存在します。

 それでも、本人の努力や、周りでサポートしてくれる人の存在により、立派な業績を残したり、自分の好きな道へ進めたりした例は数えきれないほどあるわけですから、「学校で勉強しないこと」「集団の中で勉強しないこと」がイコール「よくないこと」とは一概に直結しないわけです。

 ただ、この不登校の是非の話と、今回のゆたぼんの不登校の話は少し違うように思います。

 ツイッター上でひろゆき氏が、「一日に何時間勉強しているのか」という疑問を投げかけたとき、ゆたぼんの父親は、「赤の他人に話す必要はない」と答えました。

 もし、学校に行っていなくとも本当に自分たちの教育に自信があるのなら、こうした質問にも真正面から答えればよいと思うのです。

 それなのに、質問を退けて発言者であるひろゆき氏をけなすという方向に移ってしまうため、ゆたぼんの話は不登校とはズレた騒動になっていってしまうのです。

■YouTubeで東大の問題を解く姿に疑問

 ゆたぼんは高校で習うことをすでに理解できると主張し、「東大の入試も解ける」と、動画をあげています。

 でも、それはYouTubeの中での話なのです。

 極端な話をすれば、問題なんて事前に読んで言葉を丸暗記してしまえば、いくらでも解いているように見せられるわけですし、動画は後からいくらでも編集が可能です。

 動画の中で東大の入試を解いたところで、本当に賢いことの証明にはならないと思うのです。
 
 もし、ゆたぼんがきちんと勉強ができているということを本当に証明したいのであれば、たとえば「やらせ」が不可能な予備校などの公開模試を受けて、高校生レベルの問題にも高得点をとり、そのテスト結果を公開すればいいのではないでしょうか。

 たったそれだけで、彼の不登校やホームスクーリングに対して、否定的な見方をする人は相当数少なくなると思うのですが……。

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