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コロナ禍の家庭学習「声かけ」の秘訣をプロが指南 親子関係を守る「6秒ルール」 “努力の痕跡”に注目も〈AERA〉

5/28(金) 7:00 AERAdot.

コロナ禍の外出自粛が続き、親子が家庭の中で“密”になる状態が続いている。子育て情報誌「AERA with Kids」で、「コロナ禍の家庭学習での声かけ」をテーマにインスタライブを行うと大きな反響があった。のべ692人が視聴し、子育て中の親たちから、プロ家庭教師また塾ソムリエで知られる西村則康さんに質問が相次いだ。AERA 2021年5月31日号ではその西村さんに、追加で詳しく話を聞いた。


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──コロナ自粛で、イライラ。子どもの良くない態度が目につき、つい怒ってしまいます。

 親子が近い距離で長時間過ごせば、欠点が気になるのは当然です。子どもは本来、親の言うことなんて聞かないもの。自由奔放で、やりたいことを優先させるのが当たり前なのです。

 コロナ禍で親もストレスがたまっていると、少し注意するつもりが、普段なら言わないような暴言を吐いてしまったりする。まして勉強など教えようものなら必ずぶつかるでしょう。これでは親子関係が壊れます。

 子どもは一見、親からすると正しくない行動をとっているようでいて、実は真面目な義務感を持っています。自分がするべきことをわかっていながらそうできず、葛藤しているのです。

■イラッで6秒数える

 親に必要なのは、最低限の冷静さを保つこと。子どもにイラッとして頭に血が上ってきたと思ったらまずその場から離れる。叱ろうと思った瞬間、心の中でゆっくり6秒数える。この「6秒ルール」で心の棘が少し取れて言い方も変わるはずです。親が期待することの20%でも子どもが努力していたら、十分だと思って。それを認めてすかさずほめる。これこそが親子関係をよくする秘訣です。

──宿題さえなかなか進まない低学年の子ども。やっと終わればすぐに遊びに夢中。中学受験も考えているのに大丈夫でしょうか。

 勉強をしろしろと言葉で促しても子どもの心には届きません。子どもはむしろ、親が機嫌の良い雰囲気を醸しだしているかどうかに敏感に反応します。まずは帰宅した子を温かく迎え、ゆっくり話などしてください。自分から「遊びに行く前に宿題をしようかな」という気持ちにさせることが大切なのです。中学受験を考えているとしても、低学年のうちは計算力や語彙力を身につければ十分。過剰な家庭学習や、先取り学習は意味がありません。

学習には、適切な時期があります。小学校低学年は読み書き、計算を完璧にすればいい。4年生以降は抽象概念が扱われ、難易度が上がりますが、これを理解するには、未就学時期にどれだけ夢中で遊んだかが重要です。幼児期に日常生活の経験と遊びの中から、短期記憶や、図形の概念、速度や比重、密度や体積といったことを身体感覚で得たかどうかで、学習を理解するベースが育まれます。大切なのは、短くてもちゃんと集中して学習に向き合えているか。取り組む姿勢をみてあげてください。

■共働きに罪悪感は不要

──子どもにしっかり向き合いたいとは思うのですが、共働きなので、学習のフォローが十分にできず心配です。

 まず、「共働きが教育上よくない」という気持ちを持つのはやめてくださいね。親がいつも隣で勉強を見ることが、必ずしも子どもを良い方向に導くとは限りません。そもそも、学習とは、子ども自身が目的を持って自主的に取り組むべきもの。その訓練ができる環境を作れさえすれば、共働きでもまったく構わないのです。

 自立性を育むには、スモールステップが肝心です。低学年なら、まずは朝起きてカーテンを開けたり、新聞を取ってきたりという簡単な仕事を与えるだけでもいい。できたら必ず「ありがとう」と伝えること。親が帰宅する前に学校の宿題を終えていたら必ずほめて、「早く終えていたから、一緒に遊べるね」と団らんの時間を持つ。たとえ、宿題を終えてなくても「ノートを開いてやろうとしたんだねぇ」などと“努力の痕跡”を見つけて、すかさずほめる。時間はかかりますが、少しずつ導いていってください。

(構成/ライター・玉居子泰子)

※AERA 2021年5月31日号より抜粋

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