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公立夜間中学の設置方針、4自治体のみ 未設置48自治体中

5月23日 毎日新聞
国が各都道府県・政令市の67自治体に最低1校の設置を目指している公立夜間中学が今年4月時点で48自治体で設置されず、このうち目標年度と設置方針があるのは4自治体にとどまることが毎日新聞などの調べで判明した。国は政令市に設置された場合は所在道府県にも設置されたとみなしており、開設済みは12都府県・7政令市の計36校にとどまる。  義務教育を十分に受けられなかった人たちが学ぶ夜間中学の設置が進まない背景には、入学対象者を把握する難しさや教員確保など財政面の課題がある。  今年2~4月、未設置の道県・政令市の検討状況を調べたところ、目標年度を含めて設置方針があるのは▽札幌市、相模原市、香川県(設置者は三豊市)=いずれも目標年度2022年度▽静岡県=同23年度――の計4自治体のみだった。  未設置の自治体は、その理由としてまず、入学対象者を把握する難しさを挙げた。熊本県教委が各市町村の住民を対象に17年度に実施した調査では、回答者978人のうち「通いたい」は128人いたが、いずれも義務教育を十分に受けた後に高校を卒業するなど入学対象者に該当しなかった。担当者は「本当に必要とする人に情報を届け、ニーズをいかに正確に把握するかが今後の課題」と話す。  岩手県教委は15年度以降、市町村教委などへ設置の意向調査を続けているが、把握できている入学対象者はゼロ。「潜在的な希望者はいるはずだ。広くニーズを吸い上げる必要がある」と調査方法を見直す考えだ。福島県教委や愛媛県教委は希望者が少ないことに加え、県内に分散していることを設置に踏み切れない理由に挙げた。  岡山市教委はニーズを確実に把握することなどを目的に20年度から独自の「夜間教室」を2カ所に開設し、国語・算数(数学)の2教科を中心に月2回、元教員が授業をしている。  このほか、教員の確保や施設整備など財政負担を課題に挙げる自治体もある。人件費は昼間の中学校と同様、国が3分の1、都道府県(政令市)が3分の2を負担する。施設は昼間の生徒が下校した後の校舎を使うケースがほとんどだが、教室を新設したり、トイレをバリアフリー化したりといった大規模改修を行った事例もある。「夜間中学の必要性は理解しているが、ハコ(施設)、ヒト(教員)の問題はある」(山形県教委)▽「ハードルとして挙げるなら教員の育成。外国籍の生徒も多く来ると思うので、専門的なノウハウを持った人を配置する必要がある」(静岡市教委)――との声が出た。  夜間中学を巡っては、設置促進を自治体に求める教育機会確保法が16年12月に成立し、国は補助事業などの支援策を打ち出した。菅義偉首相は21年1月の衆院予算委員会で「今後5年間で全ての都道府県・指定都市(政令市)に少なくとも一つ設置されることを目指す」と国として初めて目標年度を明言した。【千脇康平】  ◇公立夜間中学の設置状況  ※所在地、校数(うち政令市)の順。文部科学省調べ(2021年4月現在)・茨城県……1(-)・埼玉県……1(0)・千葉県……2(0) ・東京都……8(-)・神奈川県……2(2=横浜市、川崎市) ・京都府……1(1=京都市)・大阪府……11(5=大阪市、堺市)・奈良県……3(-)・兵庫県……3(2=神戸市)・広島県……2(2=広島市)・徳島県……1(-)・高知県……1(-)・合計……36(12)

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