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議論百出の「ゆたぼん」中学問題、「不登校新聞」の編集長はどうみているのか ⑤

意思の尊重
 独学で勉強を続けることは可能でも、友人が必要なのではないかという意見も多い。ホームスクーリングより、フリースクールに通うべきだという考えだ。 「フリースクールの素晴らしいところもたくさんあります。とはいえ、集団生活に苦痛を感じている子供に無理やり通わせることは、学校への通学を強制することと同じです。友人と接しないと社会性が育たないという不安はよく耳にしますが、親と子供が会話し、夫婦の会話を子供が聞くことでも、充分にコミュニケーション能力は育つことが明らかになっています」(同・石井編集長)  石井編集長は「不登校経験者のうち、85%の人が高校に進学したという興味深いデータもあります」と言う。 「小学校や中学校で不登校を経験しても、大半の人が高校に進学したという事実は、もっと知られていいと思います。2017年に完全施行された教育機会確保法は、不登校になった場合、学校への復帰を前提とせず、多様な学びの機会を与えることで支援するという基本方針を確認しました。ゆたぼんくんが『中学校には行きたくない』という意思を表明したことは、尊重されるべきでしょう」(同・石井編集長)
失敗する権利
 スポーツ指導の現場で、選手の「暴力被害の正当化」によって、体罰が連鎖していくという指摘がある。  指導者に殴られた選手は「あそこで殴られたから、自分は上達することができた」と正当化し、自身が指導者になると選手を殴るという連鎖だ。 「同じことは教育の現場でも起きています。教師や生徒との人間関係に苦しんだり、一時期いじめのターゲットになったりして、『学校に行きたくない』と思った人は、相当な数に上るはずです。ところが、そうした人々が学校を卒業すると、『あの苦労があったから自分は成長した』と正当化してしまいます。そして不登校のまま学ぶ生徒を見ると、まるで自分を否定されたような気になってしまう。『自分だけ楽しようとしてずるい』と批判するのです。同じ傾向は、ゆたぼんくんを巡る議論でも見られると思います」(同・石井編集長)  ゆたぼんの将来を心配する声についても、石井編集長は「子供には『失敗する権利』があるという考えがあります」と話す。 「自分の意思で選択した結果が間違っていたのなら、それも重要な学びになります。特に親はどうしても『我が子が間違わないようにしよう』と先回りする傾向がありますが、それは間違いを犯すという機会を奪っていることになるのです」 デイリー新潮取材班 2021年4月17日 掲載

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