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子供の自殺増加 「内面把握難しい」苦悩する学校現場

警察庁の統計で、令和2年の小中高生の自殺者数が統計のある昭和55年以降最多の499人に上ったことが16日、分かった。新型コロナウイルス禍による学校の長期休校や外出自粛で家庭で過ごす時間が増えたことで、学業や家族の不和などに悩む人が増加したことが影響しているとみられ、子供たちへの支援のあり方に学校現場の関係者も苦悩している。

 「子供の自殺は教育現場にとって対岸の火事ではない」。大阪市立中学校の校長はそう言葉をかみしめる。以前勤めていた中学校の生徒が飛び降り自殺を図ったことがあり、幸い一命をとりとめたが、生徒らの内面に心を配る必要性を痛感しているという。

 同校では昨春の臨時休校以来、「文章でなら書ける生徒も多い」と生徒に一日の行動や悩みを書いて担任に提出させているが、そうした取り組みでも「生徒の内面のすべてを把握できるわけではない」と難しさを語る。

 大阪府内の公立小学校では、臨時休校後、風呂に入っていなかったり、家で食事ができていなかったりする児童が増えた。校長は「家庭内でのドメスティックバイオレンス(DV)やネグレクト(育児放棄)が激しくなっている。休校中は学校の目が届かなかった」と話す。府教育庁は昨年4月、ストレスを抱えた子供のサインや対処方法を紹介する資料を各市町村教委に通知。小学校でのスクールカウンセラーへの相談体制を強化したところ、昨年12月末時点で相談件数は小中学校ともに例年の1・3倍に増えた。担当者は「子供たちが追い詰められないよう、周りの大人に相談できるつながりを多く作っていく必要がある」と話す。

 兵庫県教委は昨年9~10月、小中高生ら約4万人を対象にアンケートを実施。小中学生の保護者ら約4500人も対象にした「むしゃくしゃしたり、いらいらしたり、かっとしたりすることがあるか」との質問に対し、「ほぼ毎日」「3~5日」とした割合は子供の方が保護者よりも高く、子供のストレスを保護者が把握しきれていない状況がうかがえた。

 全国的な子供の自殺の増加について、義務教育課の担当者は「大変な状況であり、学校現場には子供を注意深く見るよう伝えていく」と話した。来年度もストレスへの対処法を授業で教えたり、一人一人の子供を個別に支援したりする対策を続けていくという。


産経新聞

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